研究課題/領域番号 |
18J22254
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
無機化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 大地 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2020年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2019年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2018年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 光触媒 / 固体化学 / バンド構造制御 / 結晶構造制御 / 複合アニオン |
研究実績の概要 |
加藤およびそのグループは、層状酸ハロゲン化物Bi4NbO8Clが特異なバンド構造に由来して、安定かつ高効率な光触媒として機能することを見出し、さらに加藤は、修士過程の終盤において層状ハロゲン化物の物質群のバンド構造がお互いに異なる理由を、マーデルング解析を用いて明らかにしてきた(J. Am. Chem. Soc. 2017)。今年度はさらにマーデルング解析を拡張することで遠距離のイオンがバンド構造にどのように関わっているかを明らかにし、その成果をまとめた論文は、J. Mater. Chem. A誌に掲載され、加藤は筆頭著者である。 さらに、研究計画書でも予定していたBi4NbO8Clに対するLa固溶について、La固溶体についてシンクロトロンXRD、SHG、誘電率の測定等を行うことで、La固溶に伴い、普通の強誘電体的状態から所謂リラクサー強誘電体のような振る舞いにクロスオーバーすることを明らかにした。さらにこのクロスオーバー付近で、光触媒活性が向上することを見出し、その相関やメカニズムについて現在検討中である。 その他にも、あらたな層構造制御として、Bi2O2層の間にMO2層(M = Y, La, Bi)を挿入したBi2MO4層を持つ派生構造に着目し、構造解析から、Mの種類によってBi2MO4Cl中のBiO面が、鎖状の異なる構造歪みを示すことを明らかにした。また、鎖の構造歪に伴って、Bi2O2層を基本とする派生構造においては困難であった伝導帯の制御が可能であることが分かった。加藤は本研究成果をまとめた論文を現在執筆中である。 以上のように、加藤の研究は順調に進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記に今年度の研究成果を簡単に記した。このように、今年度も順調に研究成果が出ており、特に2番のBi4NbO8ClのLa固溶体は、従来の研究計画通りの成果である。 以前の研究におけるマーデルング解析は4オングストロームより遠いイオンの影響を無視しており、解析が完全とは言え無かった。静電相互作用は長距離に及ぶため、遠くのイオンも大きな影響を有していると予想されるが、従来の研究ではそのような遠距離のイオンの影響が注目されることは無かった。そこで、今年度はこのマーデルング解析を拡張し、数百オングストロームまでのイオンをシステマティックに計算に取り込み、より遠くのイオンがバンド構造に及ぼす影響を明らかにした。本成果はJ. Mater. Chem. A誌に掲載され、加藤は筆頭著者である。 Bi4NbO8ClはLaを固溶することで、斜方晶から正方晶に相転移することが報告されているが、詳細な構造や光触媒活性に関する報告は無い。そこで加藤はLa固溶体(Bi4-xLax)NbO8Cl (x = 0 - 0.8)の合成を行い、シンクロトロンXRDや中性子回折、SHG等を用いながら構造を詳細に解析した。その結果、La固溶に伴い、通常の強誘電体からリラクサー的な振る舞いへのクロスオーバーが起こることが分かった。 加藤とそのグループは、あらたな層構造制御として、Bi2O2層の間にMO2層(M = Y, La, Bi)を挿入したBi2MO4層を持つ派生構造に着目した。Mの種類によってBi2MO4Cl中のBiO面が、鎖状の異なる構造歪みを示し、構造歪に伴って、Bi2O2層を基本とする派生構造においては困難であった伝導帯の制御が可能であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
Bi4NbO8ClのLa固溶体については、今後も光触媒活性と構造相転移との相関について、詳細に検討するとともに、得られた知見を他の層状酸ハロゲン化物へ適用することを目指す。 Bi2MO4Clについては、固溶体や温度変化の構造に対する影響を調べる。これによりさらなる物性の制御が可能になることが期待される。
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