研究実績の概要 |
RNAのメチル化修飾であるm6A修飾は古くから存在が知られていたが、最近になりようやくその生理学的な重要性が明らかとなり、m6A修飾による遺伝子発現制御の仕組み解明が重要な課題となっている。 体内時計の制御はm6A修飾が関与する重要な生理機能の一つである。体内時計を制御する複数の時計遺伝子の中でも、Csnk1d遺伝子のmRNAは非翻訳領域において高頻度でm6A修飾されている。この領域を部分的に欠損させた遺伝子改変マウスはCsnk1dタンパク質が増加し、体内時計の周期が野生型マウスよりも長くなることをこれまでの研究で明らかにした(Fustin, Kojima, Itoh et.al., PNAS 2018 申請者は共同第二著者)。しかし、Csnk1dタンパク質が増加するメカニズムはまだ十分に解明されておらず、m6A修飾による遺伝子発現制御の仕組みを解明する上で重要である。そこで申請者は、m6A修飾の有無によりCsnk1dのmRNAに結合するタンパク質が変わり、遺伝子発現を制御するという仮説を立てた。 本年度はタンパク質の結合パターンの変化を検出するための実験手法であるRNA-Pull-Down法の実験条件最適化を進め、最適化された条件下で得られたサンプルを用いてLC-MS/MS法による網羅解析を実施した。この実験の結果、m6A修飾が存在する条件のサンプルでのみ、m6A修飾に結合することが既に報告されているタンパク質が豊富に検出された。また、m6A修飾が存在する条件と存在しない条件で結果を比較したところ、数百種類に及ぶタンパク質が結合パターンを変化させることが明らかとなった。これらの結果から、m6A修飾依存的なタンパク質の結合パターン変化が実際に生じており、この変化を高い精度で検出できたと考えられる。
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