研究実績の概要 |
今年度も引き続き高次トポロジカル相に関する研究を行った。特に、回転対称性に保護された高次トポロジカル絶縁体と、非エルミートな高次トポロジカル表皮効果に関して大きな進展があった。
(1)昨年度に導出した公式を一般化することで、n回回転対称性(n=3,4,6)に保護された高次トポロジカル絶縁体に対して、一般的なコーナー電荷公式を導出した。先行研究との主な違いは次の3つである:①結晶中のイオンの位置がユニットセルの中心とは限らない場合も含む、②バルクの分極がゼロでない場合にも適用可能、③より一般的な表面の出し方、例えば高次のミラー指数に対応する表面も考慮している。本研究により、分極が0でない物質であっても、コーナー電荷を有する可能性があることが示された。この結果は今後、コーナー電荷を有する候補物質の探索の際に大きく役立つと考えている。
(2)一般化された空間反転対称性を持つ非エルミート系において、新たなトポロジカル数を定義し、それが非ゼロの場合に高次トポロジカル表皮効果を示すことを明らかにした。非エルミートなトポロジカル系の内、点ギャップトポロジーと呼ばれるものは、対応するカイラル対称なエルミート系のトポロジーと1対1の対応関係を持つ。本研究では、カイラル対称かつ空間反転対称なエルミート系のトポロジーを考えることで、非エルミート系の高次表皮効果を特徴づけることに成功した。この結果は一つの例ではあるが、非エルミート系の高次トポロジーを考える上で、重要な一つの例を与えるものだと考えている。
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