研究課題/領域番号 |
18K00014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 日本大学 (2019-2022) 鳥取大学 (2018) |
研究代表者 |
鈴木 生郎 日本大学, 文理学部, 准教授 (40771473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 根拠づけ / 相互依存関係 / 持続 / 同一性 / 死の害悪 / 死後説 / 現在主義 / 実体 / 存在論的依存 / 本質 / 種 / 形而上学 / 根拠付け / 依存 / 存在論 / 依存関係 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、相互的な存在論的依存(相互的根拠づけ)関係に関する理論的な整備を行うこと、そして、それをさまざまな形而上学的問題に応用することである。上述目的を達成するために、2022年度は以下の四つの研究を進めた。 (A)根拠づけ問題の解決:ある対象が特定の種に属することと、ある対象がその種の成員として典型的な性質を持つこと、その対象がその種に属するものとして同一性を保つことの相互依存関係を明らかにし、そのことに基づいて「根拠づけの問題」に解決策を示すことを目指した。ただし、こうした目標を達成するにあたり、「本質に関する依存関係」と「存在に関する依存関係」を区別する必要があると考えるようになったため、その区別に関する研究を併せて行った。(B) タイミング問題の解決:死の害悪についての「タイミング問題」に対する、いわゆる「死後説」(人は死によって生じる害を、死後に被るとする説)に、「根拠づけ」の概念に基づく、より十全な擁護を与えることを試みた。(C) 現在主義の批判的検討:時間の哲学における「現在主義」と呼ばれる立場に対して、持続の事実を根拠づけるものは何かということに関する困難があることを指摘する課題に取り組み、その成果を論文として発表することを試みた。(D)実体概念の検討: 相互的根拠づけの概念に基づいて実体概念を解明する。とりわけ、アリストテレス以来典型的な「実体」とみなされている中間的なサイズの対象が、その構成要素であるミクロな対象に対してどのような意味で「独立的」であると言えるのか、という問題意識のもとで、その独立性を相互依存関係のあり方から捉えることを目指した。この研究についても、上述(A)の研究と関連して、「本質に関する依存関係」と「存在に関する依存関係」を区別することが重要であるという着想を持ったため、(A)の研究と並行して、その点に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の(C)で行った現在主義に対する批判的検討については予定通りに進行し、現在主義において、持続を根拠づける(説明する)ことに困難があることを示すことを目的とした論文を発表することができた。また、(B)で行った死の害悪のタイミングの問題についても、本年度に研究発表を行い有益なフィードバックを得ている。 他方で、研究発表後の検討の結果、(B)の死の害悪のタイミングの問題については、研究方針に一定の修正が必要であると考えるに至った。具体的には、死の害悪の問題は、(1)死の害悪を被る主体の問題と、(2)死の害悪が、それを被る主体が気づくことができない害悪であるという問題と、(3) 死の害悪のタイミングの問題という三つの問題を含むが、前者二つの問題は、可能な限り三つ目の問題と切り離して解決するべきであると考えるようになった。そのため、2022年度に論文として成果をまとめるには至らなかった。また、(A)と(D)についても、上述のように「本質に関する依存」と「存在に関する依存」を区別するというアイディアを追求する必要が生じたために、まだ十分な成果に結びついているとは言えない。もちろん、これらの新たな課題が生じたこと自体は、一定の研究の進展であると評価しているが、研究成果の公表を含めた進捗状況としては「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、上述の(B)の課題については、新たな研究方針が比較的明確なため、次年度中に論文として完成させることを目指す。具体的には、(1) 死の害悪を被る主体の問題については、「根拠づけ」概念を用いた明確な解答が存在すること、(2)気づかない害悪の問題については、害悪の研究に関する哲学方法論の観点から答えられること、(3)死の害悪のタイミング問題については一定の約定的な(「デフレ的な」)解決策が適切でありうることを示す論文を執筆し、学術誌に投稿する。また(A)と(D)については、関連するE. J. LoweやD. Wigginsの著作、及び、近年の根拠づけ関係に関する研究に基づき、アイディアを明確化した上で、2023年度中に研究発表を行うとともに、(A)に関しては論文を完成させることも目標とする。
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