研究課題/領域番号 |
18K00107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
森 弘一 常磐大学, 人間科学部, 教授 (60239621)
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研究分担者 |
石黒 盛久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50311030)
高瀬 圭子 (田中圭子) 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (60280286)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 人文主義 / ルネサンス / 書簡 / 書簡術 / 修辞学 / 教養 / 近代市民 / ネネサンス / 書簡(手紙) / 書簡作成術 / 市民 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染流行とその対応のため、予定していたように研究が進捗せず、2023年度に科研期間の延長申請を行い承認された。 史料・二次文献リストのデータベース化に関する基礎データ収集(約4000件)は、石黒らが中心となってほぼ終了した。データの編纂(ジャンル分けとデータの絞込み)と公開の方針を確定し、照合、欠損・誤記の修正等の作業を進行させている。書簡の研究論や方法論などの総論部分は、「ポライトネス理論」と関連させて、森が中心となって研究を進めているが、成果を公開するには至っていない。 書簡や書簡作成術の個別研究に関して、北方の人文主義的書簡を担当する森は、トマス・モアやエラスムスの書簡、エラスムス、ヴィーヴェス、リプシウス等他の人文主義『書簡作成術』へ範囲を広げて、個別ならびに比較の考察を進めている。ドイツ語圏の人文主義的書簡を主に担当する田中は、ツェルティスとその周辺の知識人たちの書簡分析を行ううえで基礎的史料となる、ツェルティスによる書簡作成手引の翻訳をすすめ、抄訳の形で公表した。イタリアの人文主義的書簡を担当する石黒は、イタリアにおけるルネサンス人文主義研究をリードする研究者マルコ・ペレグリーニ教授の論考「サヴォナローラ: 預言・改革そして専制への抵抗」を翻訳刊行し、マキアヴェッリ書簡の背景をなす16世紀初頭フィレンツェの政治文化の動向への認識を深めた。 各個による書簡の翻訳は、ペースがやや落ちたが進められている。他方、昨年開設したresearch mapのコミュニティ「人文主義者の書簡研究」は、その後十分に活用できていない。書簡文化を背景とした人文主義者らの近代思想形成過程、近代教養/近代市民の自己形成という、本研究の歴史背景に関する部分の総括的考察も遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
3年にわたる新型コロナウイルスの流行により、この期間の研究の進捗は遅れてしまった。その後、計画変更(縮小)やICT活用を行ったが、遅れを完全にとり戻すには至らなかった。 史料・文献リストのデータベース化に関しては、基礎的データの収集は完了し、方針に基づいてのデータの相互参照と検証・編纂の作業を進めている。ネット上と紙冊子双方でのデータ公開にむけての細かい検討も進めてきた。 書簡研究の理論・方法論の点では、書簡による人文主義者間のネットワーク形成、西洋修辞学の伝統、コミュニケーション論(特にポライトネス理論)などの視座を取り込んだ考察を進めてきた。しかし、それらを統合させて、近代化への流れの包括的に見取り図を提示するまでには進捗していない。 書簡や書簡作成術の個別研究に関しては、森は、書簡作成術の変遷(と書簡の相互交信を通じての共同体や思想形成)を論じるにあたり、トマス・モアやエラスムスらに、ヴィーヴェスやネーデルラントのリプシウスら他の人文主義者も加えて、考察の視野を広げてきたが、詳解な考察には至っていない。田中は、ツェルティスの書簡にみられる自己演出と書簡作成術の関連に着目するとともに、大学教育において修辞学と書簡作成術がもった意義を探求することで、教養市民の自己形成のありようの一端を把握しようと試みたが、一定の見通しを得るには至っていない。石黒は、マキアヴェッリとその友人たちとの往復書簡を前提に、当時の書簡の双方向性を支える書簡作成術の機能を探る目的から、彼の友人たちの返信書簡の翻訳と分析を進めてきたが、昨年は成果を公表するに足るだけの十分な作業の蓄積を行うに至らなかった。 基礎資料である個々の書簡の翻訳は、蓄積は進んでいるものの、数や人物や地域での偏りが残っており、十分適切な状況とは言えない。近代教養市民の自己形成に関わる考察も、他と比較して進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
助成事業終了年度にあたり、研究の目的や範囲を変更(縮小)したうえで、可能な限りの最大限の成果を目指す。 史料・文献データベース化は、データの照合、欠損・誤記の修正と最終編纂を年度前半までに行う。利用の便益を考え、データを厳選・整理し、適切な偏りのない分類を施す。年度ン後半には、research mapのコミュニティ「人文主義者の書簡研究」に公表し、同時に紙冊子としても刊行する。 書簡研究の理論や方法論については、伝統的な西洋修辞学とコミュニケーション論を踏まえた考察を継承する。近代教養市民の自己形成を視野に入れた考察を継続する。 個々の主要な書簡の翻訳や解釈、あるいは人文主義者の研究では、トマス・モア、エラスムス、ツェルティス、マキャヴェッリを中心に継続し、まずはこれを優先する。書簡の相互交信によるネットワークの形成の考察も引き続き行うが、その考察範囲はある程度限定する。一人称史料としての書簡の意義を踏まえた知の技法としての書簡の評価、近代教養市民の出現のプロセス、近代的個性の出現に関しても、成果の公開に支障が起きないよう、適切に考察範囲を配慮して研究を進捗させる。 そうした成果は、書籍として公開するまでの進捗が難しい状況ではあるものの、研究の総括として、経緯、個別研究あるいは研究会の成果、書簡の翻訳等も含めて、リモート会議等を通じて、総括を行う。対面のシンポジウムなどでの研究成果公開は、期間内の実現が難しいため、紙媒体とネット上での成果公開を優先する。
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