研究課題/領域番号 |
18K00140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 東京音楽大学 |
研究代表者 |
小日向 英俊 東京音楽大学, 音楽学部, 特任教授 (00399742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 移民 / 音楽 / ヒンドゥー教 / ジャイナ教 / 沖縄 / 共生 / インド音楽文化 / 日本 / グローバル化 / 宗教歌謡 / インド音楽 / 異文化音楽の受容 / 移民の音楽 / ソフトパワーとしての音楽文化 / インド系移民 / 宗教混淆 / 神戸 / スィク教 / インド人コミュニティー / グジャラート州 / 音楽受容 / 文化変容 |
研究実績の概要 |
神戸調査:2023年6月17日~20日に、神戸三宮駅、ジェイン寺院、神戸マスジッド、シナゴーグ周辺調査を実施した。ジェイン寺院では、夕刻に行われる礼拝に参列し、その儀礼の音楽を確認し、管理者代理人にインタビューを実施した。また、学会発表用として、写真および動画を撮影した。本寺院においては、神戸市周辺のジャイナ教徒住民が少ないなか、コロナ禍を経ても日常的に本寺院を訪れる人々が存在することを確認し、このコミュニティーの信仰の高さが確認できた。また参拝者に20代など若い年齢層の人々も見受けられることは、沖縄のヒンドゥー教会の宗教音楽儀礼が高年齢層に支えられていることと対照的である。神戸マスジッドにおいては、参拝者の儀礼、アザーンを観察し、学会用動画の撮影を行った。コロナ禍以後のインバウンド訪日者の増加を反映して、神戸以外からここに訪れる人々も多くいることを確認した。神戸調査においては、11月の学会発表用映像制作に必要となる神戸市に関する映像撮影のため、三宮駅周辺、生田神社、ポートアイランド周辺、およびシナゴーグまで足を伸ばして、神戸港を起点とする市の国際都市としての歴史、宗教文化の多様性を描写する映像を取得した。 東洋音楽学会第74回大会(京都教育大学):11月19日に映像発表「日本在住インド系コミュニティの音楽文化--その歴史と動態--」を行った。約28分の学術ドキュメンタリーを制作して、2回上映した。フロアからは多くの質問があり、映像最後のメッセージ「今後の共生社会実現の一助にしたい」に期待が寄せられた。 沖縄フォローアップ調査:2024年2月4日~5日に、沖縄市および、ヒンドゥー寺院を訪問した。コロナ禍前に借用した資料を返却するとともに、信者にインタビューを行った。また、古くから市に在住するシンディー系住民を再訪しインタビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初3年間の予定で開始した本研究は、コロナ禍によるフィールドワーク実施への制限のため、2回に渡り延長を行い、3度目の延長を経て本年度に至る。 2019年の最後の沖縄への訪問以来、5年ぶりとなった。宗教歌の集会(バジャンの会)はコロナ禍を経て再会され、以前とかわらぬメンバーが参加を継続していることが確認できた。 一方、2022年より開始した神戸調査では、継続的な観察が行えた。ジャイナ教寺院の宗教儀礼に関わる宗教歌の伝統、およびインディアンメーラーにおけるインド人コミュニティと日本人の交流を観察した。 江戸川区におけるインド人コミュニティーにおいても、2022年後期よりイベントなどが再会され、それぞれに人々が集う様子を観察した。
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今後の研究の推進方策 |
沖縄のインド人コミュニティーでは主に宗教歌を媒介にしたコミュニティーの結束を観察した。一方、現時点で10代、20代、30代といった世代にとり、宗教歌の集いに参集することは、「縁遠い」感覚があることも確かである。その意味で、沖縄インド人コミュニティーが、宗教歌の集いを今後も継続できるかは、若い世代の参加の実現に依存するといってもよい。また、インド人コミュニティと沖縄の日本人との交流の場は限られている。しかしサイババ信仰を通じて、日本人およびインド人コミュニティが祭事イベントを共有する事例があることが判明した。 神戸在住のインド人コミュニティにとり、神戸は仕事で大阪に通うための居住場所として機能する場合も多く、日常生活の中で、宗教歌謡にも関わりが深い。特にジャイナ教徒たちは、その人口規模は大きくないにも関わらず、熱心に市内のジャイナ寺院に詣でており、比較的若い世代にも宗教の儀礼音楽はまだ身近に感じられるようである。 東京(葛西地区)のインド人コミュニティは、規模も大きく出身地も広く北、南、東、西インドなど、インド各地に出自を持つ人々が居住する。このコミュニティは一様ではなく、基本的には言語により複数のサブコミュニティに分かれて、様々な文化活動を展開している。本研究では、その中でも西インドに出自を持ち、日本人として帰化して日本人社会とも密接な関係を築こうと模索している事例を主に観察した。また、研究代表者が関わる他の補助事業においても、これらの人々の日本語学習を補助するための音楽ワークショップの企画を模索した。 最終年度となる2024年度には、「宗教」「音楽」「共生」「移民」の観点から、これら3つのコミュニティの音楽的特質と日本人社会との関わりについて考察をまとめ、論考とする予定である。また、神戸、沖縄についてはフォローアップ調査を2回程度実施予定である。
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