研究課題
基盤研究(C)
2023年度は、浅草における生人形の見世物興行についての論文を発表した。浅草寺境内の定小屋と仮設小屋で開催されていた生人形の見世物興行が、明治に入り、浅草公園への移行のなかでも、江戸期からの興行主によって独占的に仕切られ、影響力を継承していたことが判明した。その継続性によって、浅草は安定した賑わいを生み出し、公園の目的と収入を保ちながら生人形が伝えられていく場であったことが明らかとなった。また、海外への流通のうち、博覧会に出品された人形については、サンフランシスコの万国博覧会に出品された人形の所在および報告書等の史料を確認し、分析を進めた。しかしながら人形の制作者や展示状況の詳細を明らかにするには、今後のさらなる史料収集、分析が必要と思われる。研究期間全体を通じた成果として、生人形の制作、展示に関しては、浅草での見世物興行の開催内容、状況を精査し、一興行あたりの人形数などをもとに、制作規模や経済効果を推定することができた。ほかに、佐原の祭りでの人形制作や、国内外の博覧会において、安本亀八三代目などが政府や企業からの要請を受け、等身大の風俗人形の出品がなされるなど、人形師の活動の広がりが明らかとなった。流通については、主に海外へ渡った人形の事例を収集した。明治初期は、長期の日本滞在者が生人形見世物興行を見学するなど、直接の情報を得て、人形師へ発注していたものや、訪日外国人が日本で人形を購入し、故郷の博物館へ寄贈した事例が中心であった。その後、1910年代以降、渋沢栄一などの日本の財界人が、海外の博物館に展示されていた日本コレクションの質を改善するために、安本亀八に等身大人形を依頼し、現地に寄贈するなど、その経緯の変化を捉えることができた。
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デアルテ
巻: 39 ページ: 21-39
人形玩具研究-かたち・あそび-
巻: 33 ページ: 40-53
藝術研究
巻: 32 ページ: 1-17
40022427701