研究課題/領域番号 |
18K00196
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (10551137)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 美術史 / グローバル・ヒストリー / 服飾史 / 異文化交流 / 経済史 / きもの文化 / 京都 / 日本文化史 |
研究実績の概要 |
これまで、「きもの」文化を中心とした染色デザインの世界的連環を、(1)染色技術と、(2)消費・利用の二方向からアプローチし、複数地域での研究の重要性を論じてきたが、それに関して、2022年度は、以下の一連のワークショップで研究成果を発表した。 ・2022年10月29日、法政大学における糸布衣循環史研究会主催のワークショップ「明治初期の繊維産業における革新を考える―島田昌和編著『きものとデザイン:つくり手・売り手の150年』(ミネルヴァ書房 2020年)に焦点をあてて」において、「戦前の機械捺染:導入前夜から黄金期まで」について発表した。 ・2022年11月4日、立命館大学において、国際ワークショップ「幕末から明治期の京都の繊維産業を『J-InnovaTech』の観点から考える」を主催する(共催:立命館大学アート・リサーチセンター 文部科学省 国際共同利用・共同研究拠点「日本文化資源デジタル・アーカイブ国際共同研究拠点(ARC-iJAC)」)。同ワークショップでは、「江戸時代以降のコンタクト・ゾーンにおける「きもの」文化」について発表した。 ・2023年2月10日、フランス、パリのフランス国立社会科学高等研究院で開催されたInternational Colloquium Global Japan 50 ansにおいて、“A Global History of Textiles”(招待)について発表した。 ・2023年3月17日、フランス、パリのフランス国立社会科学高等研究院で開催されたワークショップにおいて、“On Japanese Textile Designs in the 19th Century”について発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の進捗にも、新型コロナウィルスの感染状況が強く影響していると言わざるを得ないが、研究は、以下のように進捗した。(1)アロハシャツについては、2022年3月ハワイで聞き取り調査を遂行することができたのに続き、4月には「日本のハワイ」と称される指宿市で現地調査を行うことができた。同市で、4月29日開催の「アロハ宣言セレモニー」やホテル・その他の観光関連施設を参与観察するとともに、アロハシャツ関係業者への聞き取り調査及び市立図書館での史料調査を行った。(2)19世紀前半以降の日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の再検証・補完に関しては、2023年2月から4月にかけ、パリを拠点とし研究滞在することができ、その間、16世紀以降のインド更紗のグローバルな流通による、ヨーロッパ繊維産業への影響、染色デザイン・技術の発展、特に機械捺染についてフランス、英国、オランダで調査することができた。また、アフリカン・プリントについても、オランダでアーカイブ調査を遂行できた。これにより、日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の補完的調査をかなり進めることができた。(3)2021年度に続き、明治以降戦前までの「きもの文化」の再確認という意味も含め、MCD(民博コスチュームデータベース)プロジェクトに参加し、「身装画像データベース」を使い、身装文化の変容の様子を詳細に分析した。(4)共同研究として進めている研究課題「新しい近代京都機械捺染史構築に向けて―近代デザインと産業史をむすぶデジタル・アーカイブを一助として―」において、時代を横断するコンテンツとして近代京都の機械捺染工場の地図データベース作成を進めている。2022年度は、戦前の工場の位置情報をデータ入力し、地図上に落とし込み、分布状況の整理、視覚化を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、「J-InnovaTech ユリイカの向こうへ:日本の第一産業化(1800年-1885年)」(GA n°805098)研究プロジェクト・チームと共同研究をする方向に動くことにより推進していく予定である。このプロジェクトは、ヨーロッパ研究評議会(ERC)スターティンググラント助成金により、2018年よりスタートしたもので、プロジェクト代表者であるアレクサンドラ・コビルスキ氏は、フランス国立社会科学高等研究院「中国・韓国・日本」研究所(CNRS/EHESS/Universite de Paris)の日本研究センターの所長である。氏とは、パンデミック以前から、共同研究についてオファーがあったが、パンデミックによりプロジェクトは中断となっていた。それが、2022年秋より再開となった。同プロジェクトの論理的枠組は、19世紀日本の産業史を、江戸・明治と分断して考えるのではなく、継続として捉えるというスタンスに立つもので、そのサブプロジェクトとして19世紀日本の繊維産業の新たなhistoriography(歴史記述)に取り組んでいる。これは、地域毎、製品の素材や使われた染織技術毎に分断された産業史・「きもの」文化史を連結・補完することで、モノ・技術・デザインのグローバルな連環を総合的に描き出す方法論の提示することを研究目的とする、本研究課題を理論的に継続・展開させ採択された、研究課題「「きもの」文化から視るグローバル・ヒストリー―染色技術・デザイン・製品を中心に」(令和3年度~8年度)と親疎性が高い。そのため、「研究実績の概要」で述べたように、2022年10月・11月、2度にわたる日本でのワークショップで意見交換をし、それに続く2023年2月・3月におけるフランスでのワークショップ2回を含む意見交換を経て、長期共同研究を開始した。
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