研究課題
基盤研究(C)
本研究では、近世期における地方歌壇と堂上歌学との影響関係を解明するため、肥前・薩摩を中心に近世後期歌壇に関する資料の調査分析を行った。佐賀では近世後期に南里有隣を中心として私塾本教館の歌壇活動が見られることや、嘉永・安政年間に白石鍋島家が堂上風の歌壇を形成していたことを明らかにした。また、大隅地方の垂水歌壇では近世後期に飛鳥井家に師事し、堂上派の歌壇活動が活発化しており、その伝統が幕末まで続いていたことを明らかにした。さらに、近世後期肥後歌壇に、細川治年の末女就が関わっていたことや、細川家と有栖川宮家との文化的な関係について明らかにした。
本研究では、これまで具体的に検証されてこなかった地方の和歌資料を調査分析し、近世後期地方歌壇の活動実態を明らかにした。従来、近世後期以降の和歌は国学派や桂園派の系譜のなかで語られることが多く、堂上歌学はしだいに衰退したとされてきたが、地方歌壇に目を転じると、堂上歌学の影響を色濃く受けた堂上派地方歌壇とも称すべき歌壇活動が活発に見られる地域のあることが明らかになった。このことは、近世歌学の新たな側面に光を当てるだけでなく、幕末明治期の歌学を捉え直すうえでも重要な視点になると考える。
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国語国文学研究
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