研究課題/領域番号 |
18K00473
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
早川 文人 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (30724398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | オーストリア・ファシズム / 群集 / ラジオ / 祝祭劇 / RAVAG / ルドルフ・ヘンツ / ヘルマン・ブロッホ / ハンス・ニュヒテルン / アウストロ・ファシズム / オーストリア文学 / 文化政策 / ラジオ放送 / ウィーン / 群衆 / 放送劇 / ヴァルデマール・ボンゼルス / シュニッツラー |
研究実績の概要 |
本年度は,2022年5月から2023年2月末までオーストリア・グラーツに滞在する機会を得たので,これまで実施できなかった海外での文献調査・収集を集中的に行うのと並行して,現地の研究者の助言を参考に資料の読解と整理を行い,それらの成果を個別論文としてまとめた。これらは当初の研究計画に若干の修正を加えて遂行された。ウィーンのラジオ放送局「ラジオ通信株式会社」(RAVAG)の文学部門長ハンス・ニュヒテルンの関連文献調査は,主に墺国立図書館内手稿保存室で実施し,ほぼ予定通り資料を複写できた。また第二次大戦前にRAVAGの学術部門長ルドルフ・ヘンツに関する資料を主に1930年代の彼の活動に焦点をあてて墺研究機関において文献収集を進めた。その過程においてヘンツが1930年にウィーンで開催されたカトリック会議や祝祭劇の台本・演出にも深く関わっていた点に気がつき分析を進めた。カトリック会議期間中にウィーンのスタジアムで上演された祝祭劇『聖ミヒャエルよ,我らを導き給え』は,ヘンツが台本と演出を手がけていたので,その台本やカトリック会議の報告書分析し,論文にまとめた。上記の分析のプロセスを通して,ラジオという媒体の性質のみならず,1930年代の放送内容,さらにヘンツの祝祭劇において群集という問題も本研究課題に深く関わることに気づき,その知見を深める必要性も再認識し,ウィーン出身の作家ヘルマン・ブロッホの群集論についての考察も始めた。海老根剛氏(大阪公立大学)・古矢晋一氏(立教大学)が取り組む「世紀転換期から第2次世界大戦後までのドイツ語圏における群集思考の歴史的展開」の研究会に参加し,ブロッホの群集論に関する報告を行なった。またブロッホの生前には出版されなかった1936年に成立した未完の小説の初稿について,1930年代のオーストリアの政治状況を踏まえて考察も行い,論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハンス・ニュヒテルンに関する文献の収集は予想よりも捗った。ただし手稿も多く,また未整理の断片的な資料も多く含まれていたので,分析・読解に時間を要するという課題も生まれた。それゆえにニュヒテルンに関する考察に若干が遅れが出ているものの,ウィーンのカトリック会議の報告書や1930年前後のルドルフ・ヘンツの祝祭劇を集めた著作を複写でき,考察できた点は成果であった。またウィーンのラジオ放送局RAVAGの中枢にいたニュヒテルンやヘンツが祝祭劇の執筆を行なっていた点や祝祭劇とラジオというメディアの結節点において今後の研究の展開を見出した点や研究会の参加やオーストリアの現地の研究者との議論・交流を通して,その分析にあたり群集という視座を得た点も本研究課題の推進に有益であった。またRAVAGとも関わりがあり,1938年に亡命するまでウィーンで生活し生きた作家ヘルマン・ブロッホの群集論について考察が進められたことは,本研究の理論的礎に寄与するものあり,これらの点から総合的に鑑みて,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ハンス・ニュヒテルンの1930年代の活動をより詳細に分析し,それらの個別成果を学会発表もしくは論文で公表していく。RAVAGの中枢部にいたスタッフの当時の政権との関わりについても,入手した文献を中心に分析していく。オーストリア併合前まで,ルドルフ・ヘンツがラジオ放送とともに深く関わっていた祝祭劇が大規模会場で大人数を動員して行われたまさに群集祝祭劇であった点を改めて認識したことから,群集祝祭劇という研究課題の展開が見込め,その視点も踏まえながら研究を進めていく。群集という視点からもこれらの問題を照射すべく,1930年代のウィーンの群集論,ヘルマン・ブロッホの群集論に関する研究も進める。
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