研究課題/領域番号 |
18K00518
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
中道 静香 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 外来研究員 (30372634)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 千夜一夜 / アラビアンナイト / 写本 / アラビア語 / ミシェル・サッバーグ / 東洋学 / パリ / エジプト |
研究実績の概要 |
本研究は、アントワーヌ・ガランによる『千夜一夜』仏訳(1704-1717)の出版以降、多数作られたアラビア語写本・刊本の来歴を追い、それらの生産・流通・消費が、アラブとヨーロッパの間で、また東洋人と西洋人の相互作用の中で展開したことを示そうとするものである。 令和4年度は、アラブからヨーロッパへもたらされた『千夜一夜』写本の貴重なコレクションを有する、フランス国立図書館、バイエルン州立図書館、エアフルト大学・ゴータ研究図書館、ベルリン州立図書館の4館において、18~19世紀に書かれた完全写本(第1001夜で完結する写本)を中心に調査・収集を行った。未公開写本はもちろん、マイクロフィルムやデジタル画像が公開されている写本についても、実物を直接手に取って見ることで、これまで詳細が不明であった「モノ」としての写本の特徴や「本作り」の過程を把握することができた。 また、多くの『千夜一夜』写本に見られるアラビア語の一言語変種「中間アラビア語」のバリエーションについて理解を深めるため、ワークショップに参加し、最新の研究動向についての情報を得た。 『千夜一夜』写本は、主にシリアやエジプトの諸都市で作られ、ヨーロッパ人が入手し、最終的に現在の所蔵図書館に収められたものが多いが、中には例外もある。各写本にまつわる歴史的経緯もそれぞれ異なっている。イギリス・フランス・ドイツ・ロシア等で活動した著名なオリエンタリストたちが、『千夜一夜』という書物をどのように求め、扱ったのか。今回の調査をもとに、『千夜一夜』写本の内(テクスト・言語的特徴)と外(書誌・社会的背景)の両面から分析を行い、写本の系譜を再考するとともに、近代の中東・ヨーロッパをめぐる書物文化の一端を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時に計画していた4回の海外調査が、COVID-19感染拡大のため中止になったり、制限されたりする状況が続いた。令和4年度(5年目)になってようやく、初めての調査を実施することができたが、調査地や調査期間はかなり限定されたものとなった。このような理由から研究の進捗がやや遅れたため、期間延長の申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、長らく延期していたフランス・ドイツでの海外調査を実施することができた。ただし時期が年度末であったため、今回の調査をもとにした研究成果の発表は、令和5年度に持ち越されることになった。これまでの研究内容を発展させる可能性のある写本が何点かあり、今後はそれらの写本の分析・考察に注力する予定である。なお写本の来歴を確定するためには、写本の収集・売買に関わったヨーロッパ人たちの行動歴や蔵書を裏付ける各種史料から、史実を積み上げていく必要がある。写本の内容(テクスト)分析と、写本をとりまく状況証拠の精査を並行して行う。上記の研究は、口頭もしくは論文の形で発表する。 ヨーロッパの主要図書館が所蔵する写本についてはかなり調査が進んだ一方で、エジプト等のアラブ地域に残っている写本は十分に調査されたとはいえない。後者の調査も可能な限り進めていき、最終的にはアラブ・ヨーロッパの双方で保存されている『千夜一夜』完全写本の系譜について、全体像を示したい。 さらに、現在草稿の段階である『千夜一夜』文化語彙索引の出版を目指す。
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