研究課題/領域番号 |
18K00616
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 学習院大学 (2021-2022) 福岡教育大学 (2018-2020) |
研究代表者 |
勝又 隆 学習院大学, 文学部, 教授 (60587640)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2018年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 係り結び / 名詞述語文 / 形式名詞 / ゴトシ / 名詞性 / 文章 / 談話 / ゾ / ナム / モノナリ文 / 連体形+ゾ / ミ語法 / 「動詞終止形+ト」節 / ソ / 「連体形+名詞+ナリ」文 / 焦点 / 連体形 / 名詞性述語 / 文末名詞 / 係助詞ソ / 係助詞ゾ |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)上代語における名詞述語文の類型の整理、(2)中古散文における係り結びの文章・談話構成上の役割の調査、(3)上代語における「連体形+ガ」と「ク語法+ノ」に関する分析と先行研究の整理を行った。なお、すべて論文化する前の準備段階に当たるため、公表または公刊には至っていない。 (1)は本研究課題のキーワードである「名詞性」の前提となる、純粋な名詞述語文について、用例の確認と整理を行ったものである。個別の形式については先行研究も存在し、筆者自身も2020年3月に「上代におけるモノナリ文の用法と構造」(『坂口至教授退職記念 日本語論集』創想社)の中で、ナリによる名詞述語文について言及している。しかし、本研究課題の「名詞性」の尺度を明確にするためには、名詞述語文を網羅的に整理する必要がある。この整理自体は、係り結び文や連体ゾ文、モノナリ文等、関連する「名詞性述語文」と比べることによって意味を持つものであり、新規性のある成果とは言えないため、公表していない。 (2)は前年度の『竹取物語』を対象とした成果に基づき、『落窪物語』や『源氏物語』の用例の分析を進め、ゾとナムの文章構成上の役割に関する差異について、同様の結論が得られそうだという見通しを得ることができた。しかし、個別の作品の分析を付け加えて仮説を補強するだけでは新規性が不十分であるため、ゾやナムの文法的な機能とどう結びつけられるかについての考察を進めているところである。 (3)は、上代には「準体句+ソ―連体形」という係り結び文が見られないのに対し、中古には「準体句+ゾ―連体形」という係り結び文がしばしば見られるということについて、主格のガについても同様の変遷が見られることに着目し、上代の準体句やク語法、助詞ガに関して調査を開始し、「名詞性述語文」との関連で調査・考察すべき形式としていわゆる比況を表す「ゴトシ」を新たに加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は「具体的な新規性のある成果が出ないものの、研究課題の解決には必要な調査」を中心に行った。そのため、公表・公刊された成果がないため、「順調」とは言いがたい。しかし、前年度までの成果を支持しつつ、考察をさらに発展させられそうなデータが蓄積されたこと、研究計画作成時には想定していなかった形式も調査すべきであることがわかった点などから、次年度の準備は順調に進めることができたと言える。 なお、年度中に対面学会や研究会がほとんど開かれなかったことで、自由な意見交換の場が持ちづらかったこと、また、2022年の9月に新型コロナウィルス感染症に罹患したことで、一時的に研究が中断したことなどを踏まえると、本来であればもう少し研究を進展させることができたと考えられる、という点も「やや遅れている」と判断した理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
上代の準体句とク語法の性質と助詞ソ・ガ・ノの機能との関わりについて、ゴトシや欲シや形式名詞との承接関係も踏まえて調査・考察し、上代の準体句やソ・ガ・ノの働きについて考察することで、上代の名詞性述語文における準体句や連体形述語の位置づけを明らかにする。 中古のゾ・ナム・コソの係り結びと「連体形+ゾ」文、連体ナリ文、モノゾ文、モノナリ分について、文章・談話における出現位置についての調査結果に基づいて各構文の談話構成上の役割を明らかにするとともに、各役割と各構文の機能との関わりについて考察する。また、中古の係り結び構文について、ゾ・ナム・コソを中心に、焦点範囲(上接語だけを取り立てるのか、述語まで含めて示すのか)や焦点機能(新情報の提示なのか、対比なのか、疑問応答なのか等)について各係り結び構文の機能について整理する。 上代及び中古の係り結び構文や形式名詞述語文と、名詞述語文・動詞述語文・形容詞述語文との共通点と相違点について整理し、「名詞性述語文」の位置づけを示す。 主節における「名詞性述語文」の特性が、従属節において形式名詞や連体形接続の接続助詞が関わる場合と、どの程度共通し、どのような点が異なるかを分析することで、主節と従属節それぞれの特性を整理し、「名詞性」という概念自体について精査する。
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