本研究は,生成統語論の観点から,英語と日本語における数量詞句(以下,QP)の作用域を決定する統語的要因のうち,①外項・内項QPの認可方法の違い,および②格素性のQP作用域決定への関与のしかたの解明,本研究代表者の過去の研究課題である③QPの内部構造,④作用域決定における主題/焦点素性の関与についての再検討を行うことを目的とするものである。 研究期間全般を通じ,購入した文献により課題①から④に関わる先行研究の検討,学会等への出席により最新の研究情報を入手するなどの活動を行った。それと並行し研究発表,論文・著書の執筆を行った。 ①から④の全体に関わる成果として,日本語・英語の目的語QPの作用域についての考察を発表した。とりわけ,日本語の目的語QPの統語的性質についてオランダ語,トルコ語と比較し,格助詞の認可と前提性に関わる投射を仮定することによって説明を試みた。また,①の課題に関し,受動文の主語の作用域特性の説明,①に関連した課題⑤として,受動文や使役文に表れる,周辺的な内項と呼ぶべき名詞句の統語的・意味的特性を探るとともに,そのようなQPの作用域特性の観察を行った。 以上の成果に加え,最終年度では,課題⑤を引き続き検討し,さらに①の課題に関して,非対格動詞文などの内項主語QPが狭い作用域をとる特性について,内項主語の意味部門への転送のタイミングという観点から説明する可能性を検討し,逆に外項主語QPでも作用域が狭くなるケースについて考察を行い,外項主語が通常の文とは異なる構造的に低い位置で認可される可能性を検討した。これらの最終年度での成果については現在論文執筆の準備中である。
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