研究課題/領域番号 |
18K00929
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
守田 逸人 香川大学, 教育学部, 教授 (10434250)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2018年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 荘園 / 荘園絵図 / 景観復元 / 絵図 / 中世文書 / 史料保存 / 現地調査 / GIS / 荘園調査 / 近世絵図 / 画像処理 / 地名データ / 水利慣行 / 景観 / 地域社会 / 都鄙関係 / 土地制度 / 荘園史 / 地域社会史 / 区有文書 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、東大寺領伊賀国黒田荘故地(現三重県名張市一帯)を主要なフィールドとし、讃岐国善通寺領故地(現香川県善通寺市内)を補足的なフィールドとし、前近代の地域社会の景観・構造の歴史過程を、荘園絵図や文献史資料、現地調査をもとに明らかにしている。2022年度のおもな研究実績は下記の通りである。
【黒田荘故地の調査】2020年度以降、地球規模で広がった新型コロナウイルス感染症の影響によって中断していた黒田荘故地の現地調査は、2022年度3月に再開することが出来た。調査活動再開に伴い、改めて現地協力者との会合の機会を持ち、今後の調査方針を議論するとともに、現地に残る区有文書(名張市黒田地区)について若干の資料調査も行うことが出来た。 【善通寺文書の包括的調査】昨年度から引き続き、善通寺宝物館に所蔵する中世史料を中心とした調査を行った。2022年度は、とりわけ土蔵に残された未整理の聖教類の調査も行うことができた。土蔵に残された未整理聖教のすべての調査を年度内に完了することは出来なかったが、残った史料については2023年度に調査を行う予定である。なお、この善通寺文書の調査活動は東京大学史料編纂所一般共同研究「香川県下所在の中世史料の調査と史料学的研究」(研究代表者:守田逸人)とも連動させた。 【善通寺領故地の現地調査】2022年度も讃岐国善通寺領の領域全体を描いた「善通寺領絵図」の精査とともに、善通寺にて調査した文献史料の情報や、地域住民が保存してきた史資料の情報、地域に残る伝承等の調査と検証作業を行い、GISに登録への作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【黒田荘故地の現地調査】コロナ禍の影響によって中断していた調査を再開した。再開に際し、かねてから調査に深い理解を頂いてきた現地協力者と協議し、黒田荘故地のうち荘の中心となる現名張市黒田地区に焦点を当て、自治会で保持する区有文書の調査、現地に残る伝承等の聞き取り作業を手がけることになった。2023年3月には現地黒田地区にて区長さんをはじめとした住民の方々と会合の機会を持って調査へのご同意を頂き、区有文書の所在を確認した。2023年度には具体的な調査が可能な段階となった。 【善通寺文書・善通寺領故地の現地調査】コロナ禍のなかでも一程度調査が可能なフィールドであったため、コロナ禍のもとでは重きを置いて調査を行ってきた。2022年度の文書調査は、前年度に引き続いて中世分の善通寺所蔵文書の把握につとめた。なかでも、善通寺土蔵内で未整理のまま保管されていた聖教類の調査に乗り出し、多くの新出分の中世史料を発見した。一方、現地調査については、荘園絵図「善通寺領絵図」(重要文化財)や文献史料の情報をもとに、善通寺領の境界ポイントについて新たな情報を得ることが出来た。 【GISを用いた調査方法の向上に関する研究】長らく中断していたこの活動も2022年度には再開することができた。検地帳情報を効率的にGISへ記録する方法などの実験等を行った。
以上、東大寺領伊賀国黒田荘故地の現地調査について、2022年度に実現できた調査は限定的であったが、コロナ禍の影響で長らく調査が中断し、調査の再開すら危ぶまれていたことをふまえると、調査再開のめどがたち、地元地域住民の方々のご協力を得られることが確認できたことは、大きな前進であると考えている。また一方で、讃岐国善通寺領故地については、引き続き順調に調査・研究活動を行うことができた。2023年度の最終年度を迎えて、一定の成果を見込める段階に来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響により繰り返し活動期間を延長した本研究課題は、主題である黒田荘の現地調査が再開できたことから、本年度を最終年度として成果を得る見通しができた。 【黒田荘故地の調査】本課題では、広大な故黒田荘のなかから南都東大寺への造営・修造料材供給地であった竜口地区と、平安時代以来現代に至るまで持続的に集落を維持してきた荘の中心地である黒田地区に焦点を当ててきた。このうち竜口地区についてはすでに一定の成果を得てきた。2023年度は、黒田地区の共有区有文書等の現地に残る史資料の調査と撮影、および通称地名等、伝承関係の聞き取り調査と記録などが基礎的作業となる。作業をふまえ、収集史資料や情報の分析を行うとともにGISへの記録を行い、中世黒田地区の地域構造を立体的に復元する。具体的には、荘の拠点の確認、寺社等の分布状況、中世段階での在家・水田の分布状況や用水体系を復元して地域構造を復元していく。また、竜口地区での調査成果とともに、論文や報告書等にまとめる作業にも取りかかる。 【善通寺文書・善通寺領故地の現地調査】2022年度に完了できなかった善通寺土蔵内の聖教類の調査を完了させる。本活動によって日本列島を代表する地方寺院である善通寺の中世文書群の性質や伝来のあり方について、大枠がはじめて明らかになる。記録と情報を整理し、報告書の作成作業に取りかかる。一方、現地調査についても、継続的に地域社会に残るさまざまな情報を収集、整理し、中世以来の当該地域の変遷について立体的に復元していく。景観復元の成果は論文の形で発表し、細かな調査情報についは、報告書やGISデータ、それらを地図上に入力したデータ等を発信していくことを目指す。 【GISを用いた調査方法に関する研究】引き続き、周辺研究者と連携してGISを利用した調査方法に関する実験・研究会を可能な限り行い、高度化・効率化を図っていく。
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