研究課題/領域番号 |
18K01146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩船 昌起 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 教授 (00299702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 避難行動 / 時空間情報 / パーソナル・スケール / 東日本大震災 / 災害記録 / 避難行動要支援者 / 個別避難計画 / 奄美群島総合防災研究会 / 避難所 / 防災教育 / 図上訓練 / 聞き取り調査 / 岩手県 / 津波 / 避難環境 / 体力 |
研究実績の概要 |
本研究では、岩手県宮古市および山田町の東日本大震災被災者に、パーソナル・スケールでの避難行動(地震前後から津波避難を経て避難生活まで)の聞き取り調査を行い、その成果を「災害記録」として活用して、防災教育教材を開発することを目的としている。 2022年度(令和4年度)については、岩手県での調査を3回実施できた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による制約が緩くなったものの、多くの話者を集めることができず、避難行動が行われた避難環境の把握にかかわる測量調査等も交えて、予定より人数を絞っての調査となった。しかしながら、「避難行動要支援者」相当の方の避難行動を優先的に採録し、令和3年から5年間程度での自治体に努力義務とされている「個別避難計画」策定にかかわる基礎資料(災害記録)を数例得られた。 このようにして得られた「当時避難行動要支援者相当の方の避難行動の記録」に基づくと、先進的な自治体での取り組みとされる個別避難計画のひな型において、レベル5「緊急安全確保」時の避難計画が存在しないことや支援者の体力レベルが記載されていないこと等の課題を指摘でき、これらにかかわる内容を日本地理学会や東北地理学会等で発表した。 そして、「令和4年度名瀬保健所管内難病対策地域協議会」や「宇検村・鹿児島大学防災ワークショップ『宇検村湯湾での個別避難計画を考える~奄美群島総合防災研究会でのモデルとして』」等では、「避難行動要支援者相当の方の避難行動の記録」を、防災教育教材として活用して、参加者や対象関係者等に実際に提示して、実際の個別避難計画策定のあり方について具体的に議論してもらった。このような防災的な啓発活動に、災害記録としての聞き取り調査結果を活用することによって、名瀬保健所管内での難病患者や鹿児島県宇検村での避難行動要支援者の個別避難計画ひな型等の策定に生かしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度には、現地に3回赴くことができ、聞き取り調査を再開した。しかしながら、高齢者を中心とした東日本大震災被災者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染予防意識が総じて高く、聞き取り調査数を期待通り得ることができなかった。一方、今年度から、東日本大震災でも犠牲者が多かった「避難行動要支援者」相当の体力レベルの方に注目し、その避難支援にかかわった方への聞き取り調査を優先しているが、そのような方は、一般的な体力を有する方より総じて少なく、多くの話者を得難い状況であった。また、これまでに得られた聞き取り調査結果の資料としての検証をより十分に行うために、測量等の現地調査を行い、パーソナル・スケールでの避難行動が発現された避難環境の正確な再現に努めている。これまで得られたデータで未整理であったデータも交えて分析して、後世や他地域でも確認することができる災害記録として残そうとしている。 一方、防災教育教材の開発は、おおむね順調に進んでいる。研究代表者は、鹿児島県専門防災アドバイザーを務めており、その活動等の中で、本研究で開発した教材を用いて、その運用を実施している。今年度には、奄美群島民生委員・児童委員大会、県大島支庁職員研修会、鹿児島県地域防災リーダー研修会、さつま町教職員研修会、喜界町地区防災研修会、徳之島町防災研修会(自治会・町職員)等で、収集した災害記録を実際に示しながら、かつ昨年度までに開発した「避難行動や避難生活にかかわる図上訓練」等も行いつつ、避難行動での留意すべき事柄等について提示・啓発できた。 また、奄美群島北部6市町村や鹿児島県大島支庁、名瀬測候所等とともに「奄美群島総合防災研究会」を結成し、宇検村・鹿児島大学防災ワークショップでは、聞き取り調査からの災害記録を参考に、具体的な地域防災計画や個別避難計画の策定にかかわる活動を展開した。
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今後の研究の推進方策 |
被災者への聞き取り調査については、COVID-19等にかかわる基本的な感染症対策を遵守しつつ、臨みたいが、対象者である被災者の意向によって、2023年度にも十分に実施できない場合が想定できる。そこで、聞き取り調査数を増加させることよりも、災害記録として現時点で需要が高い「避難行動要支援者相当の方からの聞き取り」を優先する。また、一昨年度購入した測量機器を用いての避難環境の確認調査等も行い、避難行動が行われた場所(避難県境)や避難所空間の再現も含めて、これまでの聞き取り調査結果の確認を行う。 また、本研究プロジェクトが今年度で最終年度となることとも関連して、取りまとめにかかわる作業も重視したい。パーソナル・スケールでの避難行動にかかわる聞き取り調査の成果については、昨年度に学会発表5件を行ったが、今年度については、これらの発表分および新たに行う分も含めた内容を適宜整理して論文を作成し、学術雑誌に投稿する。 一方,防災教育教材の開発については,鹿児島県専門防災アドバイザーとしての活動や奄美群島総合防災研究会にかかわる自治体等での講演やワークショップ等の中でも,本研究で開発した教材を用いて,その運用の試行を継続する。 そして、本研究プロジェクトで得られた成果にかかわるの報告書についても、年度末に作成する。
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