研究課題/領域番号 |
18K01189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 北海道大学 (2019-2022) 岐阜大学 (2018) |
研究代表者 |
山口 未花子 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60507151)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 動物 / カナダ先住民 / アート / モノ / あいだ / 狩猟実践 |
研究実績の概要 |
今年度はカナダでの調査を計画していたが、コロナ感染によって中止となってしまったため、引き続き日本での狩猟実践を中心にした研究を進めてきた。 毎年実践を積み重ねてきたことから、捕獲方法を工夫したり捕獲した動物を解体、加工する行為を通じて、動物の身体と狩猟者の身体がどのように関係を結び、その間に何が生成するのかを、より広いスパンで詳細に確認することが可能になっただけでなく、罠猟や銃猟といった異なる方法、捕獲場所や加工の仕方などによってどのような差異が生じるのかといった点など詳細に検討することができた。例えば季節に応じて変化する動物の行動や分布の範囲に合わせて場所や狩猟の仕方を変化させることで捕獲の効率が上がり、また季節や個体によって異なる動物の身体を同加工するのか、どう利用するのかという点では動物の身体が猟師をアフォードするような側面も確認できた。 また、そうした経験をこれまで調査してきたカナダ先住民の狩猟実践と比較することで、これまでの研究についてさらに深い理解や新しい発見をすることも可能になった。例えば動物の輪郭を正確にとらえることを重視するのは、森の中で動物を見つけやすくすることに寄与するが今年度の実践の中でその重要性を実感することができた。そうした観点からは動物の身体について人間が興味関心を描く心理的な背景として狩猟の技術としての重要性があることが経験に示された。 また、「描かれた動物」をテーマにした共同研究を通じてアーティストや他分野の研究者との交流を重ねることで、肉や毛皮といった動物の身体との直接的な接触が人間に喚起するイメージの強さや、人間だけでなく動物とのコミュニケーションのために芸術表現が使われる可能性についても検討することができた。 また、こうして得られた成果は著書やオンライン記事、講演などの形で積極的に発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年の夏に予定していたカナダの先住民における動物の資源利用と表象についてのフィールドワークの予定が、コロナ感染のため中止になったため当初の予定からやや遅れている。一方で、狩猟実践を通した研究については回数も増やし、申請者自身の狩猟技術のの上達に伴い実際に狩猟をすることで動物の身体が変容していく過程や、その身体を用いた表象、教育効果といった点について検証することが可能になるなど、研究の進展という側面では著しく遅れているわけではないと言える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの流行という予期しなかった状況によって計画の進捗が遅延したことと、研究の核心ともいえるフィールドワークを実施することができなかったことから、まずはこれを着実に実施する。当初予定していた狩猟実践とそれによって得られた動物の身体を解体加工利用する過程を経験的に学ぶことをベースにしながらその中で動物認識がどのように変化するか、また動物の身体と相互作用を重ねる中で生成するものを動的にとらえることを第一の目的とする。 また、こうした調査の中で、日本での狩猟実践を通じて生じた疑問や、カナダでの狩猟との類似点と同時に動物種の違いや猟師個人の実践の差異を比較すると同時にコミュニティレベルでどのように動物の身体が認識され利用されるのかという点についても重点的に調査する必要がある。特に動物の身体を加工する技術やアートの表現についても実践的に比較検討するためには時間がかかることが予想されており、コロナで調査できなかったことを考えるとフィールド調査を伴う調査研究を継続することが望まれる。 また、こうして得られた知見は、ワークショップのような形式に落とし込むことで教育にも応用可能でありその効果は大きいことがこれまでの試験的な取り組みからもわかっている。人新世と呼ばれる現在において、自然とともに暮らす知恵や動物との直接的なかかわりを通じて学ぶべきことは多いと言えることから、今後は成果の公表や教育プログラムの開発にも力を入れていきたい。
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