研究課題/領域番号 |
18K01328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
根本 尚徳 北海道大学, 法学研究科, 教授 (30386528)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2018年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 差止請求 / 削除義務 / 侵害者責任 / 人格的利益 / 信用毀損 / 口コミ / 差止請求権 / 人格権 / 物権的請求権 / インターネット |
研究実績の概要 |
今年度は,インターネット上において,私人の人格的利益(名誉・プライバシーなど)が違法に侵害されている場合において,そのような違法な侵害が行われる場(例えば,電子掲示板やTwitterなどのいわゆるプラット・フォーム)を運営する者や当該侵害を拡散する者(検索エンジンの運営者)など(いわゆる媒介者)が負うべき差止めの義務=削除義務の発生要件に関する私見をまとめる作業に取り組んだ。 以上のような作業を促進するための作業として,第1に,上記削除義務に関する比較法的研究を行った。具体的には,当該義務に関するドイツ法・ヨーロッパ法の議論(判例・学説・立法)の最新動向を確認し,その意義や特徴を検討する論文の執筆を進めた。また,このようなドイツ・ヨーロッパにおける議論は,インターネット上における知的財産権の侵害(例えば,著作権の侵害)をめぐる議論に大きく影響されているため,後者の議論についても,同じくドイツ・ヨーロッパにおける最新の議論を検討し,その内容を論文にまとめる作業を行った。 第2に,2023年3月上旬に来日されたフランツ・ホフマン教授(エアランゲン・ニュルンベルク大学)と東京で面会し,以上の諸点について,聞き取りと意見交換とを行った。 第3に,最判令和2年6月24日民集76-5-1170によって,インターネット上におけるプライバシー侵害について,プラット・フォームの運営者(具体的には,Twitter社)が削除義務を負うべき場合(当該義務の発生要件)に関する判例が日本で初めて示された。そこで,この判例の意義や特徴,残された問題などについて分析を行った。その成果は,判例研究として,近日中に公刊される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究活動によって,前述したようなドイツ・ヨーロッパにおける,インターネット上での人格的利益侵害および知的財産権侵害に関する媒介者の削除義務をめぐる議論の概要,および,その基礎を成すところの私法上の差止請求権(妨害排除請求権・不作為請求権)の一般法理に関する議論の概要を,最新のものまで含めて,把握することができた。 また,その適否を,ドイツの研究者,しかも上記削除義務,さらにはその基礎を成す不作為請求権(差止請求権)の一般法理に関する彼の地の若手第一人者とも言うべき研究者であるフランツ・ホフマン教授(同教授は,2017年に公表されたその教授資格請求論文『法的救済手段としての不作為請求権』以来,不作為請求権の基礎原理に関する研究のみならず,まさしく--その具体化としての--インターネット上における人格的利益・知的財産権侵害に関する媒介者の削除義務の発生要件・内容についても,多数の論文を公けにし,ドイツ・ヨーロッパにおける議論を牽引し続けている)への聞き取り調査と同教授との意見交換とによって確認することができた。 さらに,削除義務の発生要件に関する私見についても,同じくホフマン教授との意見交換を行うことで,考えをなお深めることができた。 加えて,以上のような基礎的・比較法的研究を踏まえつつ),これらの具体化あるいは応用として,日本における最新の判例の研究という形で,インターネット上における人格的利益(プライバシー)の侵害に関する媒介者の削除義務の発生要件について,具体的な分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究活動の蓄積を基に,インターネット上における人格的利益(名誉・プライバシー)の侵害,さらにはインターネット上における知的財産権の侵害に関する媒介者の削除義務の発生要件および当該義務の具体的内容について,同様の論点に関するドイツ・ヨーロッパ法上の議論を比較法的検討の素材としつつ,かつ,我が国における従来の議論および最近の判例・下級審裁判例の進展をも踏まえて,民法上の差止請求権の一般法理に根ざした私見を提示するための論文の執筆作業を継続する。 このような作業を効率的に,また効果的に進めるための方策として,第1に,上記論文の執筆作業が一定の区切りを迎えた段階で(その段階ごとに),その時点までにおける研究成果について,日本国内の研究会において研究報告を行い,上述の問題に関心を寄せる日本の研究者と意見交換を行う。 第2に,ドイツの研究機関に短期間滞在し,上記問題に関する判例・学説・立法の最新動向を探るとともに,当該問題に関心を寄せる複数のドイツ人研究者との意見交換を行う(そのような研究者の筆頭は,もちろんフランツ・ホフマン教授である。ホフマン教授からは,今後,この問題に関する意見交換を継続して行うことについて,了解を得ることができた)。 第3に,上記論文の執筆・公表とは別に,前記判例に関する評釈の執筆を進め,できる限り早期にこれを公表する。また,ホフマン教授からは,ドイツ法上の不作為請求権の一般法理に関する教授の見解の要点をまとめた論考の翻訳を日本で公表することについて許諾を得た(当該論考は,ドイツ・ヨーロッパにおける媒介者の責任をめぐる議論をより良く理解するためにも有益なものである)。その実現に向けた翻訳作業も迅速に進めていく。
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