研究課題/領域番号 |
18K01510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
天谷 研一 香川大学, 経済学部, 准教授 (80379461)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 戦略的情報伝達 / 進化ゲーム理論 / コーディネーション / 情報伝達 / ネットワーク / 制度設計 |
研究実績の概要 |
企業組織や社会制度を設計する上で、情報収集や情報伝達のメカニズムは重要な問題である。しかし、情報の流れは、制度設計者がすべてコントロールできる ものではない。組織の設計においても、構成メンバーによる自然発生的な情報の流れを勘案しながら、設計者の手の届く範囲においてコントロールすることが不可欠である。本研究では、ネットワークの進化を織り込んだ上での、情報伝達メカニズムの設計について考察する。 当該年度は、進化ゲーム理論の手法を用いて、プレイヤーが行動の意図を伝達する効果について考察した。 第一に、多数のプレイヤーが存在する社会の中でプレイヤーが誰と接触してプレーを行うかに影響できる状況を考察した。具体的には、ゲームに先立ち、各プレイヤーは自分がプレーする場所を選択し、同じ場所を選択したプレイヤーとの間でマッチングが形成されることを仮定した分析を行った。第二に、プレイヤーが事前にメッセージを送ることができるが、メッセージはゲームにおける行動の意図に関するものであり、メッセージの受け手はメッセージを信じるか無視するかの解釈しかできないことを仮定した分析を行った。いずれの考察においても、結論として、ゲームが「自己シグナリング条件」を満たす場合、またその場合に限り、パレート効率的な均衡が選択されることが証明された。この結論は、Clark, Kay and Sefton (2001)らによる実験結果と整合的である。 本研究では、場所の選択というネットワーク形成に関わる意思決定と、ゲームにおける行動に関わる意思決定がどのように相互に関係しあうかについて、一つの特徴を明らかにすることができた。さらに、ネットワークの中でメッセージが及ぼす影響について、実験結果と整合的な理論的な説明を与えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、期間全体を通じて、社会や組織のメンバー間の自発的な情報の流れがどのように生成されるかを、情報伝達ネットワークの進化という点に焦点をあてて解明することを目的としている。分析手法としては、Crawford and Sobelらによる戦略的情報伝達の理論と、Jackson らによる戦略的なネットワーク形成の理論を統合する。与えられたネットワークでどのような情報伝達がなされるかを戦略的情報伝達の理論を用いて精密に解明した上で、そこで得られるプレイヤーの利得から、ネットワーク形成の理論を用いてネットワークの進化を考察する。次に、上記の分析に得られた結果をもとに、メカニズムデザインの理論および進化ゲーム理論の手法を用いて、組織や社会にとって最適な制度がいかなるものであるかを理論的に解明する。 これまでの研究で、第一に、場所の選択というネットワーク形成に関わる意思決定と、ゲームにおける行動に関わる意思決定がどのように相互に関係しあうかについて、一つの特徴を明らかにすることができた。第二に、情報伝達において用いられるメッセージの解釈方法が経済主体の意思決定に及ぼす効果について、一つの特徴を明らかにすることができた。 しかし、当該年度は、新型コロナウイルスの対応で所属先の教育業務や管理運営業務に多くの時間をとられたため、研究の遂行に十分な時間をとることができず、論文の形にまとめて発表するまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでの研究成果を発展させることによって、社会や組織のメンバー間の自発的な情報の流れがどのように生成されるかを、情報伝達ネットワークの進化という点に焦点をあてて解明する。分析手法としては、Crawford and Sobelらによる戦略的情報伝達の理論と、Jackson らによる戦略的なネットワーク形成の理論を統合する。与えられたネットワークでどのような情報伝達がなされるかを戦略的情報伝達の理論を用いて精密に解明した上で、そこで得られるプレイヤーの利得から、ネットワーク形成の理論を用いてネットワークの進化を考察する。 今後の研究においては、情報伝達の問題に特有と考えられる以下の要素を、ネットワーク形成の理論に組み入れて分析する。(1)プレイヤーは、自分が受け取った情報をそのまま伝えるとは限らない。意図的に情報を歪めるインセンティブを持つ可能性がある。(2)情報仲介者により情報が歪められるため、単一の情報でも複数のルートを経由して得たほうが情報の精度を増すことができる。(3)プレイヤーは、より多くの情報を持つ人とコンタクトを持とうとする。このため、正のネットワーク外部性が生じる。(4)一方で、一人のプレイヤーが多くのプレイヤーと接触すると、特定のプレイヤーとの固有の関係に対して投入する資源は減る。このため、負の外部性が生じる。(5)プレイヤーは、優れた情報仲介者としての名声・評判を構築しようとする。(6)プレイヤーは同質ではなく、組織内における立場、与えられた賃金体系等、組織設計の中で内生的に生成される異質性が存在する。
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