研究課題/領域番号 |
18K01531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堂目 卓生 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70202207)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | アダム・スミス / ジョン・ステュアート・ミル / アマルティア・セン / 共感 / 共助 / 近代社会 / 自然的正義 / 開かれた公平性 / 複数のアイデンティティ / マーシャル / 経済的騎士道 / 経済生物学 / ベンサム / ミル / 功利主義 / スミス / 道徳 / 競争 / 見えざる手 / 貿易 / J. S. ミル / アルフレッド・マーシャル |
研究実績の概要 |
共感に対するアダム・スミス、J. S. ミル、アマルティア・センの考え方を整理するとともに、3人がどのような社会を構想していたかを検討した。その結果、スミスは資本家によるフェアな競争によって労働者階級に雇用が広く行き渡る社会を、ミルは労働者も含めたすべての市民が競争プロセスに参加できる機会均等の社会を、センは自然的、社会的要因によってケーパビリティが狭められている人びとの境遇改善を優先させる社会を構想していることが分かった。 他方、3人が社会に対して共通した見方をしてることも分かった。それは、社会の中心に財やサービス、知識の生産に貢献できるという意味で「有能な人(capable)」を置き、生産に貢献できず、有能な人から財やサービスを分配してもらう人を「弱者(vulnerable)」として周辺に置いていることである。この見方を近代社会に共通している見方として捉え、「開かれた公平性」を獲得するためには、この「近代社会観」を乗り越えなくてはならないという見解に至った。 近代社会観の超克にあたって、「『弱者』(vulnerable)は『有能な人』(capable)から一方的に助けられるだけの存在か」という問いを立てた。確かに「有能な人」は「弱者」に対して財やサービス等、ケーパビリティ拡大のための支援を与える。しかし、それだけではなく、「弱者」に向き合い共感することによって、「弱者」への偏見や「弱者」になることへの恐れから解放される。他方、「弱者」は「有能な人」から一方的に助けられる存在ではなく、「弱者」であるがゆえに与えることができるものを持つといえる。こうして、「有能な人」と「弱者」との間には共感を通じた共助関係があるという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の取りまとめ段階として、スミス、ミル、センが共感概念を用いて様々な社会を構想していること、しかし根底には共通した社会観を持っていること、真に「開かれた公平性」のに向けてこの社会観が超克されなければならないことが解明され、ゆえに研究目標はおおむね達成できていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ新時代を意識しつつ、「開かれた公平性」にもとづいた真の共助社会がどのような社会かを検討するとともに、それを支える経済の在り方を探る。それによって、経済学において共感概念が果たした役割を歴史的に解明するだけでなく、未来社会構想のための理念的基礎とし、本研究の成果とする。
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