研究課題/領域番号 |
18K01534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07020:経済学説および経済思想関連
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
栗田 啓子 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (80170083)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 田園都市 / 都市計画 / 住居の近代化 / 20世紀初頭の日本 / 20世紀初頭のフランス / 社会連帯思想 / 社会経済 / 労働者住宅 / 地方自治 / 内務省 / 技術官僚 / フランス / 工業化 / 都市・住宅論 / 大正デモクラシー |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀末から1920年代までの都市・住宅政策をめぐる「社会経済」思想の日仏比較をテーマとして、文献研究と実地調査を組み合わせた研究方法を採用している。2018年度は田園都市構想、2019年度は労働者住宅を中心に研究を展開した。しかしながら、コロナ禍の影響を受けて、2020および2021年度に続いて、今年度も国内、国外とも実地調査を実施することができなかった。 したがって、今年度は文献研究に集中し、日仏の田園都市構想の比較を行った。 日本の思想研究では、1)昨年度に実施した明治期の内務省地方局刊行の『田園都市』とそれに続く大平正芳の田園都市構想(具体的には、香山健一の田園都市国家構想)と比較しながら、実際に田園都市建設に従事した、渋沢栄一など、いわば民間デヴェロッパーの思想も検討対象とし、構想の異同を分析した。2)内務省地方局『田園都市』と密接な関連を有した明治期の貧困救済・地方活性化を担った官僚の思想を比較検討し、フランスの田園都市構想を主導した人々に見られる「連帯思想」との共通点を探った。これらの研究の結果としては、次の点が明らかになった。田園都市構想が穏やかな社会改革を見ざしており、それゆえに田園都市内部に協同組合などの互助組織が設置されている点は、イギリスやフランスのみならず、日本の官民の田園都市構想に共通していることが明らかになった。具体的には、日仏とも、1)田園都市構想の担い手の多様性が認められ、2)田園都市が求められた当時の社会・経済状況の類似性が見出されることが確認できた。さらに、田園都市のデザインを都市計画というマクロの側面と住居の特性というミクロの側面の両面から分析した結果として、公衆衛生、家族・道徳、不況・失業、コミュニティ・連帯の4つの論点にまとめることができ、日本の田園都市構想もフランスと同様に連帯思想と解釈できるという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、19世紀末から1920年代までの都市・住宅をめぐる「社会経済」思想の日仏比較をテーマとして、文献研究と実地調査を組み合わせた研究方法を採用 している。「研究実績の概要」にも記したように、実地調査については、2022年度も2020・2021年度に続いて、コロナ禍の影響で予定を全て延期せざるを得なかったことによって生じた進捗状況の遅れはまだ回復できていない。 一方、 文献研究は概ね順調に推移している。日本について、『田園都市』や『欧米自治救済小鑑』などの内務省関連の資料および日本の田園都市構想のパイオニアである井上友一の著作の精査を継続し、民間の「社会経済」思想を発掘するために昨年度着手した比較研究(西村伊作などの実践者や渋沢栄一と小林一三といった住宅地開発の主導者の思想)も継続した。フランスについては、田園都市協会の代表的メンバーを輩出したル・プレ学派と日本の内務省官僚との交流に着目し、フランス田園都市構想の日本への影響を検討した。
実地調査については、2018年度、2019年度の実地調査によって、日仏の理論的、思想的な差異だけでなく、実際の都市デザインや建造物のデザインの違いが工業化の段階の相違だけでなく、 居住権を人間らしい暮らしに欠かせないものと捉える人権観念の相違によっても生み出されていることがわかったが、田園都市構想の思想上の日仏の類似性が大きいことを考えると、実践面における日仏の異同をさらに確認するために、実地調査を継続したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に掲げた課題でもあるが、日本における民間、とくに企業家による労働者住宅供給に関する実地調査が遅れているので、2023年度には、その部分に力を入れる予定である。実地調査については、日立鉱山などの見学と軽井沢のアメリカ屋(橋口信助)が田園都市構想に基づいて開発した別荘地および和歌山県新宮市の西村伊作記念館、小林一三の宝塚地域の住宅地開発の見学を実施することにしたい。 フランスにおける実地調査については、内務省地方局の『田園都市』が取り上げているマローサン村のワイン生産の労働者協同組合(現存している)の調査を軸に、これまで行ったパリ近郊の田園都市を再訪し、現代に通じる問題点を確認したいと考えている。 最終年度の総括としては、1) 日仏の住宅改善と生活改善の関連性の異同を確定する。日本においては、明治末期の田園都市構想と生活改善運動および社会救済事業との関連、フランスにおいては、北部炭田地域とパリ近郊の田園都市構想と各種アソシアシオン(禁酒などの生活改善運動と文化・趣味に関わるクラブ活動)との 関連の比較検討を通じて「社会経済」思想の一つの柱と考えられる「快適性」の思想を摘出する予定である。日仏における「快適性」の追求が認められる社会階層の差異の解釈が重要な論点になると考えている。2)労働者住宅建設と比較しながら、田園都市構想が市場万能主義や成長至上主義への穏健な批判(資本主義の否定には至らない社会改良主義)として機能していた点を明確にする。この点については、当初の予定にはなかったが、大平正芳の田園都市構想と津幡修一の農村休暇・自由時間都市という考え方といった戦後日本にまで時代を広げて考察したいと考えている。
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