研究実績の概要 |
既刊最終年度では、これまでの研究成果を取り入れ、地価とマクロ諸変数との関連を、地理空間分析法を活用しつつ証研究に取り組んだ。研究成果として、以下の通り以下1編の論文と1冊の共著書を公刊した。 (1) 得田雅章「マクロ経済変数と資産の価格」, 『資産評価政策学』, Vol. 24, No.1, pp.1-9., 2023 (2) 二宮健史郎・得田雅章「金融構造の変化と不安定性の経済学:理論と実証」, 日本評論社, 2024 (1)の論文では、収益還元法による固定資産の大量・システム評価 に注目し、全国の基礎自治体レベルでのマクロ経済変数と鑑定評価地価との定量的関係を明示するとともに、資産評価の課題および展望を提示した。用意した地価関数固定効果モデルに基づく推計には、地価、レント、実質金利のほか、コントロール変数として事業所数、人口密度を含めた。長期均衡地価関数およびECM型地価関数の推計により、鑑定評価に基づく地価変数とマクロ経済変数との関係を定量化した。 (2)の共著書は、2010年代中頃より共同研究を行ってきた二宮健史郎(立教大学教授)との諸論文をまとめたものであり、H. Minskyの金融不安定性原理に関する理論と実証分析をバランスよく取り組んだものとなっている。本研究に深くかかわるのは、全11章構成のうち共同執筆の第8章、単独執筆の第10章・第11章の3つの章である。 これらを受け補助事業全期間の概要は、非観測変数の定量化ならびにその変数を用いた政策効果の実証分析を目的とし、その成果を9編の論文および2冊の共著図書としてまとめたものとなる。内容は大きく、①日本の金融政策の実体経済に与える効果と限界について時系列分析を行ったもの、②GISを活用した地価関数あるいは金融機関パフォーマンス関数をパネル推計したもの、③乗数分析による経済波及効果を測定したものの3つに大別できる。
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