研究課題/領域番号 |
18K01829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
馬場 靖憲 麗澤大学, 経済学部, 特別教授 (80238229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 破壊的イノベーション / 日本企業 / 研究開発 / exploration / exploitation / 組織学習 / 研究所 / 事例分析 / 探索活動 / 新規事業開発 / 両手利き組織 / 探索研究 / 継続性 / 富士フイルム / コダック / ケース分析 / ケーススタディ / リーダーシップ / 認知バイアス / 企業文化 / 両利き経営 / 複数ケーススタディ |
研究実績の概要 |
破壊的イノベーションによる事業転換はどのように可能になるか、前年度、本研究は富士フイルムとコダック社の研究開発と事業展開を比較分析し、成功のためには企業の探索活動における継続性(persistency)が不可欠なことを明らかにし、破壊的イノベーションを組織学習の視点から研究する際に、探索活動における継続性という概念が有効であることを示し、その結果を国際学術誌に発表した。 本年度は、その見解に一般性が認められるか確認するために、本研究グループが保有する日本企業の研究所における研究開発活動に関する質問票調査のデータベースを利用して分析した。その結果、日本企業は、近年、企業の研究開発を一部、事業部から研究所へと移す事実があるが、その成果は主に従来からの継続的なイノベーションである傾向が確認された。その理由としては、低成長経済に慣れた日本企業は、ローリスク・ローコストの機会を求めるために、破壊的イノベーションに必要な継続的な探索活動を避け、実現される探索は継続的なイノベーションを目的とする探索に限定される傾向を示す。 探索と利用の適切なバランスを重視する両手利き組織の観点からは、低成長経済に適応した日本企業が研究所と事業部を問わず組織学習において利用(exploitation)を偏重するバイアスを示す事は、破壊的イノベーションの実現に向けて最大の経営問題となる。事実、企業は新事業開発に意欲的であるにもかかわらず、同バイアスにより、研究所の新事業への貢献は既存事業の強化への貢献に比べ小さく、既存事業への貢献は事業部研究に匹敵するほど高いという逆説的結果を生んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年からのコロナ禍により、感染防止の観点から国内外で開催されるはずだった学術集会の多くが中止を余儀なくされた。その結果、研究費に当初、計上した旅費による出張は中止され、学術集会での討論により初めて可能になる研究論文の投稿に向けた練り直しが難しい状況となった。その結果、英文論文の最終稿の作成に大幅な遅延が発生し、当初、予定した英文校閲も未達になり「その他」経費に多くの未消化が発生した。2023年5月現在、感染の収束に関する見通しは明るくなってきたが、進行中の論文作成について、どのように外部研究者の意見・批判を採り入れて論文としての質を向上するか、どのように研究論文の早期の公開が可能か、模索が続き、結果的に、研究の進捗には遅れが発生している。その結果、従来、行っていた研究集会でのチェックを受けて投稿論文の作成に移る学術研究プロセスをスキップし、学術誌へ投稿することを決断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に関するパイロットサーベイからは、研究開発体制の再編に際して、本社研究を縮小する企業がみられた。表面的には、探索活動の縮小によって新規事業、また、破壊的イノベーションへの取り組みの熱意の低下が危惧されるが、実は、それらの企業の経営陣は、「イノベーションのジレンマ」の弊害を 十分に学習しており、多くの企業が、コーポレート研究を既存事業から切り離し、新規事業開発に特化させる等、破壊的イノベーションを視野に入れて戦略的な 対応に取り組んでいる。日本企業には、明らかに日本企業に適した形で「両手利き経営」に向けて試行錯誤を始めている企業があり、収集した知見に関する分析を、従来からの研究成果と統合化し、日本企業に適した「破壊的イノベーションマネジメント」の可能性、ま た、実現するために必要となる経営方法論を学術的に明らかにする。
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