研究課題/領域番号 |
18K01864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上野 恭裕 関西大学, 社会学部, 教授 (30244669)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2018年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ファミリービジネス / ファミリー性 / 社会情緒資産 / 長期存続 / 伝統産業 / 競争優位性 / 線香産業 / 刃物産業 / 社会情緒的資産 / 社会関係資本 / 競争優位 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「ファミリー性」の概念を応用し、日本のファミリービジネスの競争優位の源泉を明らかにすることである。そのために、2021年度に引き続き、ファミリー性と社会情緒資産に関する文献研究と事例研究を中心に研究を進めてきた。その結果、社会情緒資産は家族の間だけでなく、地域にも拡大して適用が可能なことが明らかとなった。具体的には地域への貢献や業界への貢献を通して、非財務的な価値を追求する伝統産業におけるファミリービジネスの存在が明らかとなってきた。 事例研究ではそのような社会情緒資産を保有している地域の伝統産業である線香産業に注目し、ファミリービジネスの競争優位性を明らかにしようとした。線香産業は伝統産業であり、地場産業として産地に集積を形成し、ファミリービジネスの要素を強く持っている産業である。また長寿企業としてその業界で長く活躍する企業も多い。また中小規模の企業が多く、単独での生き残りではなく同業組合を形成し、それを通した業界の発展を模索している。具体的な事例として淡路島を拠点とする兵庫県線香業組合の事例研究を行った。 研究の成果として明らかになったことは、この組合は社会貢献・地域貢献を目指した経営理念のもと、独自のブランドを構築していた。それらはファミリービジネス特有の家族の絆により補強されると同時に、多くの企業の横のつながりをもとに構築されていた。地域への貢献という経営理念を実現するために同業者間のネットワークが活用され、社会情緒資産を保有しているのである。またブランド構築のための明確な戦略を保有しているということも発見事実としてあげられる。このようなことが、伝統産業におけるファミリービジネスの競争優位につながっていることが明らかとなった。この発見事実を大学の紀要に論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献の収集、資料の収集は計画通り順調に行われているが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外の企業に対する現地でのインタビュー調査が制限され、国際比較の観点から若干の遅れが生じている。ただしオンラインを利用した調査を進めるなどの工夫でそれを補っている。また、学会も多くが中止、あるいはオンライン開催になり、発表や議論の機会が失われており、研究者との意見交換が十分に行えていない。これについてもオンラインを活用し改善を図っているが、現地での対面による情報収集に比べると得られる情報量に限界があり、若干の研究の遅れとなっている。 次年度において新型コロナウイルスの感染が収束し、海外の現地企業へのインタビュー調査を再開できるようになれば、これまでの研究の遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、これまでに収集した文献、資料を分析し、事例研究で明らかとなった発見事実をもとに、ファミリー性と社会情緒資産の概念の有効性を検討し、理論の批判的検討を行い、理論の再構築、新たな概念の提唱を目指して分析を進めていく予定である。そのために、これまで新型コロナウイルスの感染拡大により制限されていた国際比較研究を中心に実施していく予定である。海外渡航の制限が緩和された場合には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により実施できなかった海外企業の現地インタビュー調査を可能な限り実施し、より豊富なデータや情報の収集に努める。 さらにこれまで構築してきたデータベースをもとに質問票調査を実施し、仮説の厳密な検証を行う予定である。これらによって得られた研究成果を論文として投稿すると同時に、これまで中止や延期となっていた国際学会の状況を注視しながら、研究成果を発信のための学会参加、学会での研究発表を進めていく予定である。
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