研究課題
基盤研究(C)
共食はコミュニケーションの場であり,人の心理的健康に良い効果をもたらすことが明らかになっている.本研究は,6名4組に対し,同じメニューを銘々膳形式,共同膳形式で提供した会話を記録し,共食中の人の行動の特徴を分析した.その結果,食事中の話し手は,一定の時間において発話を継続する状況が確保しやすいこと,大皿からの取分け時には多くの人が発話すること,参与者らは料理の話題で会話場を活性化させていることが確認された.これにより共食会話には他者との相互理解を深めたり,初対面同志の会話機会を得たりする場として機能しており,こうした人と人のつながりが心理的健康に貢献していることが示唆された.
日本は超高齢社会にあり,平均寿命の延伸に伴い人々は長い高齢期を過ごしている.高齢者の一人暮らし,あるいは夫婦のみで暮らす世帯が増加している現状において,社会的孤立が問題となっている.本研究は,食事コミュニケーションは人と人との絆を深める機能を持つとの仮説の下,実際の食事シーンにおける人の会話行動を分析し,高齢者が社会的ネットワークを効果的に形成できる共食の特徴を,人間行動科学的なエビデンスをもって示したところに社会的意義がある.
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