研究課題/領域番号 |
18K02261
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 十文字学園女子大学 (2019-2022) 東京家政大学 (2018) |
研究代表者 |
森高 初惠 十文字学園女子大学, 国際栄養食文化健康研究所, 客員研究員 (40220074)
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研究分担者 |
峯木 眞知子 東京家政大学, 家政学部, 教授 (30129283)
澤田 めぐみ 東京家政大学, 家政学部, 教授 (30291339)
山中 健太郎 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (90359662)
不破 眞佐子 昭和女子大学, 生活科学部, 准教授 (60320785)
小林 三智子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (20153645)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2018年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 泡沫食品 / エスプーマ法 / 膨化率 / 豆乳 / 力学特性 / 泡沫の構造 / 官能評価 / 食塊 |
研究実績の概要 |
当該年度では、エスプーマにより亜酸化窒素ガスを注入した豆乳泡沫の構造と力学特性に対するトロミ剤(TA)濃度と振盪回数の影響について検討した。比較のために、電動泡立て器を用いた泡沫も測定した。2回の等速圧縮測定で得られたテクスチャー曲線を解析するためのプログラムを作成した。解析項目は、3個のピーク(P1、P2、P3)のピーク値、P1とP2の立ち上がり時の傾き、P1とP3の頂点の傾き、P2のベースライン交差直前の傾き、P1とP3の面積比(凝集性)とP2の面積(付着性)とした。 各ピークの最大値はTA濃度の高い泡沫で大きかった。TA濃度の増加に伴い、P1の圧縮初期および後期における抵抗力は増加したが、後期では初期よりも抵抗力が弱まった。圧縮後の伸長変形に対する抵抗力もTA濃度に依存して増加した。付着性と凝集性もTA濃度の高い泡沫で大きかった。振盪回数については、振盪回数の少ない泡沫で解析値は高い傾向を示した。電動泡立て器による泡沫では、各ピーク値はエスプーマ泡沫ほど明確なTA濃度の依存性は認められなかったが、高濃度のTAで増加した。ピークの傾きは、P1の立ち上がりの傾きを除いて、TA濃度が高い泡沫で大きかった。反対に付着性はTA濃度の低い泡沫で増加した。攪拌時間については、凝集性とP1の立ち上がりの傾きが少ない攪拌時間で増加したが、他の項目には有意差が認められなかった。 顕微鏡観察において、TA濃度が増加するとエスプーマ泡沫のサイズは均質化し、経時的にも安定化した。中間の振盪回数で気泡サイズは均質化したが、それ以外では不均一であった。電動泡立て器による泡沫では、TA濃度が高いほど気泡の形状は球形となり、気泡間の隙間が広くなった。攪拌時間の影響については、攪拌90秒までは気泡サイズが小さくなったが、120秒の攪拌では表面の気泡数が少なくなり、エスプーマ泡沫とは異なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では、咀嚼・嚥下機能に応じた安全で栄養価の高い泡沫食品の物理的性質やその利用可能性を究明するために、試料として決定した無調整豆乳に微量のトロミ剤を添加した泡沫について、顕微鏡観察や力学特性などの機器測定および超音波パルスドップラー法による咽頭部における輸送速度の測定を行う計画であった。 しかし、エスプーマ法による豆乳泡沫試料の調製には多くの時間を要した。加えて、試料が泡沫であるために経時変化が激しく、測定を十分に実施するためには多くの時間を要した。また、新型コロナウイルス感染症対策のために、ヒトを対象とした実験が困難であった。 その結果、研究がやや遅れた状態ではあったが、当該年度において泡沫のトロミ剤濃度依存性や攪拌回数依存性に関する顕微鏡観察や力学特性の測定を行うことができ、本研究で究明しなければならないことの一部が明かとなった。今後は、当該年度までに得られたデータを基に新たな切り口から実験を行い、研究目的達成のために考察を深める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では当該年度に引き続き、エスプーマ法により形成された泡沫の特徴を電動泡だて器による泡沫と比較することにより明らかにする。当該年度では顕微鏡観察や力学特性の機器測定などから、客観的なデータを得ることができた。しかし、超音波パルスドップラー法による嚥下時のヒトの咽頭部における泡沫食塊の輸送速度に関する測定はできなかった。 次年度では、超音波パルスドップラー法による嚥下時のヒトの咽頭部における泡沫食塊の輸送速度を、定量的に明らかにする。超音波パルスドップラー法によるヒトの体内を観察する手法は、安全で非侵襲性であるために広く医学領域では活用されている。本測定により咽頭部の食塊の最大輸送速度、最大平均輸送速度および平均輸送速度などが取得できる予定である。また、新たにみかけの粘性率のずり速度・ずり応力依存性あるいは貯蔵弾性率や損失弾性率の周波数依存性などを測定し、泡沫の力学特性を更に明らかにする。みかけの粘性率のずり速度・ずり応力依存性からは、相対粘度、降伏応力、粘稠性係数および流動性指数が得られる。これらの特数からは、咽頭部を泡沫食塊が安全に通過するために必要な力学特性である伸長変形に関する情報が得られる。貯蔵弾性率や損失弾性率の周波数依存性からは、泡沫の弾性的性質と粘性的性質の関係を明かにすることができ、泡沫食塊の誤嚥や咽頭部での泡沫食塊の残留に関する情報を得ることが可能となる。次年度では、当該年度までに得られたデータと次年度のデータについて総合的に検討し、エスプーマ法による泡沫食品の特徴を明らかにし、嚥下困難者用食品としての安全性や適用性などについて究明する。
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