研究課題/領域番号 |
18K02328
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 放送大学 (2022) 千葉大学 (2018-2021) |
研究代表者 |
片岡 洋子 放送大学, 千葉学習センター, 特任教授 (80226018)
|
研究分担者 |
瓦林 亜希子 都留文科大学, 教養学部, 准教授 (10780249)
山田 綾 四天王寺大学, 教育学部, 教授 (50174701)
佐藤 隆 都留文科大学, 教養学部, 教授 (70225960)
LEROUX Brendan 帝京大学, 外国語学部, 准教授 (80610203)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2018年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | フレネ教育 / 中等教育 / 新教育 / 学習の個別化 / 学習の協同 / フレネ |
研究実績の概要 |
セレスタン・フレネ(1986-1966)が始めたフレネ教育は、20世紀初頭にアメリカ、ヨーロッパ、そして日本で広がった新教育の一つである。他の新教育と同様に、教師主導で教授中心の学校教育を、子どもの興味・関心に基づく主体的で自由な表現を尊重した教育へと転換しようとするものであった。しかし、例えばシュタイナー教育が独自の学校を設立しておこなわれるのに対して、フレネ教育はどこにでもある公立学校をつくりかえる教育思想・方法として、今も世界各地の公立学校で試みられている。 ただし、日本も含め多くの場合、フレネ教育は小学校で実践されている。ところが中等教育段階でフレネ教育が実験的に行われている、CLEF(フレネ教育実験中学・高校) は、コレージュ(中学)・ジャン・ジョレスと、リュミエール・リセ(高校)を結んで実施されている中等教育におけるフレネ教育の実験的・創造的教育課程で、2008年にスタートしたフランスでも初めての試みである。教科ごとに教師が変わる中学校で、一体どのようにしてフレネ教育が可能なのか。 フレネクラスと伝統的クラスとでは、どのように何が違っているのか。フレネ教育は中学校の教育をどのようにつくりかえようとしているのか。私たちは、それを知るために、何度かジャン・ジョレス中学を訪問し、授業の視察やインタビューをおこなってきた。またCLEFの情報科学の教師であるカティ・リガル、および地理歴史の教師であるエレーヌ・カザビアンカが2014年にCLEFの6年間の教育について報告した文書を翻訳し、研究資料としてきた。 その調査で得られた授業記録や資料をもとに、日本の中等教育改革、とりわけ教育課程をどうつくりかえることが可能かという研究課題を設定して共同研究をおこなっている。これまで日本のフレネ研究会などで、これまでの研究について発表してきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により追加の現地訪問調査等が不可能となった。研究成果のまとめ方についても再検討しなければならなかった。 また研究成果のまとめのための研究会を対面に代わってオンラインやメール等でおこなってきたが、当初の予定通りに進めることが難しかった。 研究成果のまとめの段階に入り、分担執筆中の論文を検討してきた。新教育シリーズの1冊として2022年4月にフランスで出版された幼稚園から大学までのフレネ教育の実践記録の中に、ジャン・ジョレス中学のカティ・リガルによるフレネ教育の実践報告があり、2022年度はその文献も併せて検討することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度を最終年とし、これまでの研究成果の出版に向けて、執筆分担をし、それぞれの論文の検討をおこなっていく。 日本の中学校・高校の教育の現状とりわけ生徒が学校で何を学んでいるか、学んでいないかという実態分析とつきあわせて、フランスの中学でおこなわれているフレネ教育の実験が日本の教育改革にどのようなインパクトを与えるのか、明らかにするよう、研究のまとめをおこなっていく。 フレネ教育は、個々の子どもの関心や興味から出発し、教科の学習へと発展させていく。ここで言う発展とは、予め設定されたり期待されたりする教科の系統学習へと向かうという意味ではなく、子どもが自らの問いを抱き、その問いを深めていくために資料を読み、自分の言葉で説明するなど、その子ども独自に問いの探究を深めていくことである。しかし、学校では子どもが学ぶべきことは、子どもの興味・関心とは関係なく予めどういう順に何を学ぶか決められている。それが教育課程=カリキュラムと呼ばれるが、それはシラバスであってカリキュラムではないと、フレネ教育の研究をしてきた佐藤廣和が指摘している。 教科書を使わず、子どもたちが関心を持てるような教材を用意し、授業方法を工夫している場合でも、授業で何を学ぶかを決めているのは教師である。そうした授業では子どもが主体的に考え学ぶことを大切にしているが、子どもからの問いや意見の相違などがほぼ教師に想定されて授業が展開されていく。しかしフレネ教育は子どもが何に興味を持つか、どんな問いを発するか、やってみないとわからないし、展開も読めない。幼稚園・小学校など初等教育では実践されてきたフレネ教育が、中等教育で行われてこなかった理由の一つがここにある。果たして生徒の興味・関心から各教科で学ぶべきとされている科学・文化へのアプローチしていけるのか、それについてフレネ教育実践に即して検討する。
|