研究課題
基盤研究(C)
ロールシャッハ法は投映法心理検査の一つとして医療を中心とする臨床支援の場で用いられてきた。量的指標にもとづいた分析に加え、反応(回答)の伝え方(言語表現など)を含めた質的分析も行うことによって被検査者の行動特徴を詳しくとらえることが可能である。本研究では、テスター(検査者)が、ロールシャッハ法のにおけるテスティ(被検査者)の反応のどこに着目し、そこから何を読み取るかについて検討した。約60名の心理臨床家に協力を求め、ロールシャッハ法の実施記録を用いて調査を実施した。研究協力者の回答を5名の研究者(臨床心理士)5名で評定・分類し、量的・質的分析を行った。研究協力者は大学生群、初中級者群(臨床経験10年未満)、中上級者群(10年以上)に分け、テスティの特徴的な反応に着目しているか、及びその特徴から見立てたテスティの行動の意味付けや人物像解釈について記述しているかどうかについて、群間比較を行ったところ、着目のポイントに関しては群間差がないものの、解釈まで踏み込んだ回答が記述されているかどうかについては、10枚のロールシャッハ図版のうち2図版において院生群と他の2群で量的な有意差が見られた。そこで有意差のあった図版ⅡとⅩについて、解釈の記述内容を質的に比較検討した。その結果、中上級者群は単に特徴の意味付けにとどまらず人物像解釈に至る記述が多く示されている点で、初中級者群との相違があった。以上のことから、臨床家の養成教育でロールシャッハ法を用いて特徴を把握することは一定の効果が得られていること、ただし、それを人物像解釈につなげて支援に役立てるためには臨床経験が影響していることが示唆された。学術誌に投稿したところ、研究協力者となった60名の群分け、及び群間差が見られなかった部分についての考察について、さらなる検討が必要である旨の指摘を受けたことから、現在は分析結果の見直しを行っている。
2: おおむね順調に進展している
これまでの成果を国際学会で発表し、「心理臨床学研究」誌に論文投稿した。研修会を開催した。ロールシャッハ法を学ぶためのワークブック作成の準備を行った。
分析方法(比較する群分け、指標の再検討)について共同研究グループ内で話し合い、新たな工夫を加えて見直しを図る。既に分担し作業は進行中である。再度学会誌投稿を予定している。また、最終年度にあたるため、報告書を作成する。
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