研究課題/領域番号 |
18K03285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
辻 元 上智大学, 理工学部, 教授 (30172000)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ケーラー多様体 / 多重劣調和関数 / ベルグマン核 / 極値的測度 / p-ベルグマン核 / ケーラー・アインシュタイン計量 / 標準束 / 標準測度 / リッチ流 / 断熱極限 / 複素モンジュ・アンペール方程式 / 極小モデル / 森理論 / 正閉カレント / 乗数イデアル層 / 射影代数多様体 / モジュライ空間 / 代数的ファイバー空間 / 小平次元 / 飯高予想 / 葉層構造 / 多重種数 / 標準系 / 複素多様体の変形 |
研究実績の概要 |
コンパクト・ケーラー多様体上の不変測度の近似について研究を継続しました。特に小平次元が0以上のコンパクト・ケーラー多様体の上の標準測度(extremal measure)についてベルグマン核や極値的測度の力学系による近似を与えました。ベルグマン核による近似については従来は力学系を二重に用いて近似を構成していましたが、これを大幅に簡易化しました。今まで飯高ファイブレーションの底空間の上のホッジ直線束は一般には真の直線束ではなく、真の直線束のべき根になっているため、力学系を二重に用意して近似を構成していました。それを構成を工夫することにより、単純な力学系による近似を与えたのです。 また別の近似方法として,p-ベルグマン核の力学系による近似も与えました。p-ベルグマン核については余り詳しいことが分かっていないのですが、最近、中国を中心に研究が進んでいます。方法は通常のベルグマン核の力学系による近似と、以前に構成した極値的測度の力学系による構成の中間的なものなので、その2つの力学系で挟むことにより、自然に標準測度に収束することを示すものです。p-ベルグマン核の力学系を使う利点としては、pをホッジ直線束に掛けて真の直線束になるように調整することで、自然な力学系が構成できることで、p-ベルグマン核の研究が進むことで、応用が期待できるように思います。p-ベルグマン核については、今のところあまり詳しい性質が分かっていない状況ですが、ベルグマン核と同様の射影族上の多重劣調和性が知られており、多重標準系の直像の自然な計量の曲率の半正値性を示すことができます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多重種数の変形不変性という大問題について、それが成り立つ理由について、いろいろなことが分かってきたと思います。特にケーラー・リッチフローの特異時間大域解が、標準束の擬正性から従うことが判明したことは、「コンパクト・ケーラー多様体の滑らかなケーラー族において、一つのファイバーの標準束が擬正の場合、全空間の相対標準束が擬正か?」という問題に多重種数の変形不変性が集約される可能性を示唆するものとして注目されるところです。この問題は、「標準束が擬正でない場合に多様体が単線織的か?」という射影台数多様体の場合に成り立つ定理と関連があり、コンパクト・ケーラー多様体の場合にも今のところ反例は見つかっていない問題です。射影的で標準束が擬正でない場合に、単線織性を示すには、所謂、森理論の bend and break を用いて示されるものです。この周辺のことは、コンパクト・ケーラー多様体の接束の分解(Harder-Narashimhan filtration)と関係のある話で、非常に興味深いものです。即ち、標準束が擬正でなければ、その多様体の接束には「正の方向」があり、その方向に曲線をbend and break すれば、有理曲線を沢山つくることができ、その結果、多様体が単線織的であることが従う訳です。ただし、この議論が成立するには多様体が射影代数的であることが必要です。なぜなら、多様体が代数曲線で覆われているという仮定がないと、bend and break で有理曲線を沢山つくれないからです。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コンパクト・ケーラー多様体のケーラー族上のケーラー・リッチ流の連続性を示すことが課題になる。これは射影代数多様体の射影族の場合はケーラー計量のベルグマン計量による近似と、ベルグマン核の連続性をL^2拡張定理によって示すことによって得られる。ケーラーの場合の証明には、何か新しい道具を導入しなくてはならないと考えている。
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