研究課題
基盤研究(C)
標準宇宙モデルとして知られているフリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー時空における非線形波動について考察する.この時空の計量は一般相対性理論に登場するアインシュタイン方程式の厳密解の一つであり,一様等方的な物質分布のもとで膨張または収縮する宇宙モデルを表す.本研究の目的は,解の爆発の条件,爆発解の存在時間の評価を明らかにし,さらに平坦な時空であるミンコフスキー空間の場合での既知の結果と比較することによって,宇宙膨張速度を表すスケール因子が非線形波動に及ぼす影響を解明することである.本年度は加速膨張するドジッター時空を一般化した宇宙モデルの場合についての研究で昨年度開発した新しい方法を,係数が時間変数に依存するラプラシアンに拡張した波動方程式に適用した.まず消散効果が消えない場合において,爆発解の存在時間についての評価を一般化させることに成功した.また,時間が経つにつれて消散効果がなくなっていく場合の波動方程式についても解の爆発条件および爆発解の存在時間の評価を求めることができた.これらの結果をまとめた論文を学術雑誌に投稿し掲載が決まった.研究期間全体では次のような成果を得た.膨張宇宙モデルを減速,等速,加速の場合に分け,波動方程式については非線形項を未知関数の冪乗タイプと未知関数の偏導関数の冪乗タイプに分けて研究を進めた.解の有限時間での爆発が起こる条件を求めることにより,波動方程式型,熱方程式型と見なせる臨界指数の他,ミンコフスキー空間では見られない2つの新たな臨界指数が見つかった.これに伴い,解の存在時間の評価は様々なタイプに分かれた.等速膨張,加速膨張する場合については, 1より大きい任意の冪乗で解の爆発が起こるという興味深い結果も示すことができた.ミンコフスキー空間の場合と比べて解の爆発が起こりやすいこと,爆発解の存在時間も短くなることが判明した.
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