研究課題/領域番号 |
18K03367
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲生 啓行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00362434)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 複素力学系 / 分岐測度 / くりこみ / ヴァーチャル・リアリティ / 4次元 / 4次元可視化 / バーチャル・リアリティ / 反正則力学系 / バーチャルリアリティ / 分岐現象 / ヴァーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
二次多項式族のMandelbrot集合の境界を,双二次多項式族の場合に一般化したものの1つである分岐測度の台は,Dujardin-Favreのlanding定理を用いて数値的に計算することができる.石井らとともに開発しているVR(ヴァーチャル・リアリティ,仮想現実)を用いた4次元可視化手法を用いて操作し,観察することで,landing写像の不連続性によって生じる「穴」が存在することを数値的に発見し,この「穴」を通過する複素直線を1つ具体的に求めていた. 数値的な観察では,この複素直線上ではほとんどのパラメータでは分岐測度の台と交わらないことが明らかであり,問題となるのは放物型不動点を持つ2つのパラメータとその近傍である.従って,この近傍が分岐測度の台と交わらないことを示すことが肝要である.これを示すために,まずLebedevの不等式を用いた放物型不動点のFatou座標の新しい評価方法を与え,更にそれを利用した精度保証つき数値計算による区間演算を用いて,この2つのパラメータの10の(-6)乗程度の大きさの近傍が分岐測度の台と交わらないことの確認ができたので,あとは数値計算で実際にどこまで確かめられるかだけが問題となった. また,最近Navarroが研究している4次の有理関数族に,3次多項式族の特徴的な1-パラメータ空間のコピーが含まれていることを発見した.この現象はこれらの有理関数が3次のくりこみを持っていることに由来しており,これにShen-WangによるThurston理論を用いた新しい擬等角手術の手法を適用することで,3次多項式族のconnectedness locusが自然に埋めこまれていることが示せると期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
双二次多項式族の分岐測度の台の「穴」の存在については,そこを通過する複素直線が分岐測度の台と交わらないことを示せばよいが,理論的に非自明なのは2つの放物型パラメータである.区間演算による計算と,Lebedevの不等式を用いた新しいFatou座標の評価を用いることで,その2つのパラメータの小さな近傍は分岐測度の台と交わらないことが確認できた.これはとても大きな進展である.実際には計算量の問題があるので,この複素直線が完全に分岐測度の台と交わらないことは証明不可能かもしれないが,理論的な枠組みは完成したので,あとは現実的な時間で可能な範囲で計算を行う予定である. 以前の宍倉との近放物型くりこみに関する共同研究においては,Lebedevの不等式の特殊な場合であるGolusinの不等式を用いてFatou座標を評価していた.この共同研究においては,放物型写像から摂動できる大きさが正であることのみが示されており,摂動できる大きさの具体的な評価が大きな課題として残っている.この新しい評価を用いた区間演算によって,摂動のサイズを具体的に評価することが可能になるだろうと考えている. くりこみ可能な有理関数族については,以前のグラフ上の力学系を用いた構成法ではどうしても高い次数にならざるを得ず,もっと次数の低い単純な例が求められていた.今回Navarroの研究をもとにして,4次の有理関数族で作れる見通しが立った.Shen-Wangによる新しい擬等角手術の手法の応用例としても典型的なものであると考えており,その意味でも重要である.
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今後の研究の推進方策 |
上記の複素直線全体が双二次多項式族の分岐測度の台と交わらないことを示す為には,放物型パラメータのもっと大きな近傍でこれを示す必要がある.現実的な計算時間でこれを示せるかどうかはまだわからないが,改良して少しでも大きな近傍で示したいと考えている.また放物型パラメータの近傍以外の部分が分岐測度の台と交わらないことは理論的には簡単だが,放物型パラメータの近くでは計算量が膨大になるので,現実的な計算時間でどの程度近くまで計算できるかは,実際にやってみる必要がある. くりこみ可能な4次多項式族の構成については,Shen-Wangの擬等角手術の手法を使うために,Yoccozパズルを構成する必要がある.多項式では無限遠点の超吸引鉢1つを用いて構成していたので,それを修正して2つの超吸引鉢を用いる必要があり,組み合わせ的には複雑になるが,基本的には同じ手法で示すことができるであろうと考えている.Wangとはくりこみ可能なパラメータ族や無限回くりこみ可能な多項式等について共同研究をしており,彼と協力して研究を進める予定であると考えている.
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