研究課題/領域番号 |
18K03405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
只木 孝太郎 中部大学, 工学部, 教授 (70407881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 典型性原理 / 量子情報理論 / アルゴリズム的ランダムネス / 量子力学 / 多世界解釈 / 確率解釈 / ベルの不等式 / アルゴリズム的情報理論 |
研究実績の概要 |
量子力学では確率概念が本質的な役割を果たす。この確率概念はボルン則として量子力学に導入される。しかしながら、量子力学を記述する今日の数学において確率論とは測度論のことであり、ボルン則が基づく“確率概念”に関して、操作的な特徴付けは見当たらない。さて、これまでの研究で私は、アルゴリズム的ランダムネスの概念装置に基づいて、“典型性原理”と呼ぶボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を導入した。 本研究は、典型性原理に基づく我々の枠組が、量子力学の実際の問題の取扱いとその解析において適切に機能することの実証を目的として、典型性原理を、量子暗号をはじめとする量子情報理論の主要な技術に適用し、典型性原理に基づいてそれら技術の精密化を行い、量子情報理論の再構成を行うものである。 本研究では、2018年4月の開始以来、「交付申請書」に記載した「研究実施計画」の通りに研究を進め、当初計画の最終年度である2021年度までに、量子テレポーテーション、スーパーデンスコーディング、量子操作、量子誤り訂正の一般論、主要な量子誤り訂正符号のクラスであるCSS符号及びその一般化であるスタビライザー符号、量子情報源符号化、量子通信路上での古典情報の通信路符号化、量子通信路上での量子情報の通信路符号化などに対し、次々と典型性原理を適用し、それらの精密化と再構成を行った。 量子暗号BB84の安全性証明は量子情報理論の全般にわたる種々の結果を総動員して行われるが、2021年度の研究の最後では、上述の成果に立脚し、典型性原理に基づいて、この安全性証明を再構成し、その精密化を行った。 以上のように、本研究では、量子情報理論を題材にして典型性原理によってその精密化・再構成を行うことにより、典型性原理の有効性と妥当性を追認し実証した。 2022年度は、本研究で得られた膨大な研究成果を論文にまとめるための作業等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、典型性原理の有効性と妥当性を確証するために、典型性原理を量子情報理論の主要な技術に適用し、その精密化を行い、量子情報理論の再構成を行うことであるが、本研究では、その開始以来、交付申請書に記載した「研究実施計画」の通りに研究を進め、量子テレポーテーション、スーパーデンスコーディング、量子操作、量子誤り訂正の一般論、主要な量子誤り訂正符号であるCSS符号及びその一般化であるスタビライザー符号、量子情報源符号化、量子通信路上での通信路符号化などに対し、次々と典型性原理を適用し、それらの再構成と精密化を行い、全てにおいて成功した。そしてこれら成果に立脚し、典型性原理に基づいて量子暗号BB84の安全性証明の再構成と精密化を行い、これにも成功した。このようにして、当初計画の最終年度である2021年度までの研究で、交付申請書に記載した「研究の目的」を達成した。 更に本研究では想定外の成果として、ベルの不等式対量子力学論争の典型性原理からの導出・精密化を行い、これに成功した。そして、この論争を完全な量子相関を持つ設定に拡張したGHZ実験をめぐる論争についても、典型性原理からの導出・精密化を行い、これにも成功した。 このように本研究では、その研究内容自体は当初の予想以上にスムーズに進行した。 一方、研究というものは論文としてまとめてこそ最終的に完成するものである。本研究で得られた膨大な研究成果の全てを複数編の論文にまとめるための作業を行うために、2022年2月に補助事業期間延長を申請し、受理された。しかしながら、2020年来のコロナ禍の影響などにより、2022年度末までに全ての論文が完成しなかった。 以上の事情を勘案し、本研究課題の進捗状況を総合的に判断すれば、論文としてのまとめは未完ながら、「研究の目的」は当初計画通りに達成しているので、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた膨大な研究成果のまとめとして、完成させなければならない論文が複数編残存する。2023年度は、それらの論文の全てを完成させ、然るべき国際論文誌に投稿することに注力する。 同時に、2023年度は、本研究の成果を国際会議および国内会議で発表し、本研究の成果の国内外への徹底した周知を行う。 以上を行うために、2023年2月に補助事業期間再延長を申請し、受理された。 2023年度は、以上の方法を通じて、本研究成果の、特に、国際的な周知を徹底して行う。
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