研究課題/領域番号 |
18K03496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪府立大学 (2018-2021) |
研究代表者 |
田中 智 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80236588)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 量子光学 / パラメトリック増幅 / シンプレクティック幾何学 / 複素スペクトル / 量子相転移 / 複素固有値問題 / 非エルミート量子力学 / 動的カシミール効果 / cavity QED / 非エルミート系 / フロケー理論 / シンプレクティック対称性 / パラメトトリック増幅 / 複素スペクトル解析 / 高次高調波発生 / 非線形光学 / 超高速分校 |
研究実績の概要 |
高強度入射レーザー場と電子との非線形相互作用による高次高調波発生に対して、レーザー場による電子の励起から高調波発生までを一連の量子散逸過程として捉え、電子の散逸過程と放射光の 複合的な運動をコンシステントに扱う高次高調波発生の理論を構築している。不可逆過程を力学的に基礎づける拡張ヒルベル ト空間における複素固有値問題に対してフロケーの方法を適用し、高調波発生過程の解析に向けた基礎理論の構築を進めている。2022年度においては、2021年度に引き続き、高強度外場による電子系と電磁場の強い相互作用の結果重要となる仮想遷移相互作用の効果を取り入れた外場駆動下での光自発放射過程について研究を行った。2021年度の研究によりシンプレクティック空間におけるリウビリアンの複素固有スペクトルには、パラメトリック分岐点と散逸による共鳴特異性の2つの分岐点が共存することがわかっていたが、2022年度には、これらの分岐点に分かれた各領域で光子放射スペクトルに特徴的な違いが現れることを、共同研究者の神吉一樹氏とともに明らかにした。この結果は、レーザー学会のレーザー研究2023年5月号に掲載されることとなった。さらに、この系が持つ2つの質的に異なる不安定性の起源をシンプレクティック幾何学的な見地から解明する研究を進めた。その結果、複素固有モードへの変換が分岐点を境として非ユニタリ変換へ変わり、量子真空状態がヒルベルト空間から艤装ヒルベルト空間に属する超関数としての意味に変わることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では1年目に高強度レーザー場によって2準位量子系の固有振動数が周期的に時間変化する系での高次サイドバンド自発放射過程を回転波近似のもとで解析 する手法を確立した。2年目の2019年度は、この研究成果を土台として、回転波近似を超え、仮想遷移相互作用を含んだ力学系での放射過程の定式化へと研究を 進展させた。3年目には、フロケーリウビリアンの複素固有スペクトルを得ることに成功し、パラメトリック分岐と時間対称性の破れが生じる分岐構造を見出し た。2021年度は、複素固有値問題における艤装ヒルベルト空間の概念の確立、など理論の基盤を確立した。これらの結果をもとに、2022年度は、リウビリ案の複素スペクトル構造における分岐点で分かれた各領域ごとに質的に異なる光子放射が生じることを明らかにした。このことは、理論的に見出された転移の様相がどのように観測量に現れるかを具体的に示した点で重要な進展となった。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ、研究費も消費し切っているため、今年度はこれまでの研究成果をまとめ、論文発表、学会発表を行うことに専念する。研究のまとめとしては、1)リウビリアンの複素スペクトル構造と光子放射スペクトルとの関連、2)仮想遷移相互作用に起因する不安定性と外部環境系への散逸による不可逆性の共存効果による放射の変化、を中心としてまとめ、研究成果発表を行う。
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