研究実績の概要 |
これまで本申請において(1)陽子-中性子相関におけるテンソル力の影響が非束縛状態の構造依存性、(2)中性子-中性子相関が核構造に与える影響という2つの対象について、コア核と価核子の模型空間でのCluster Orbital Shell Model (COSM)を用いて精密な計算を行ってきた。(1)については18F (16O+p+n), 42Sc (40Ca+p+n), 58Cu (56Ni+p+n)の3つの原子核を対象として、価核子である陽子と中性子が占めることのできる連続状態の構造が、テンソル力を通じて3体の束縛状態である18F, 42Sc, 58Cuの基底状態および励起状態の準位に影響を与えることを示した。(2)については31F(29F+n+n)における中性子-中性子相関と部分系である30F(29F+n)の準位間のエネルギー間隔とが密接に関連し、31FのHalo構造の発達および抑制を30Fの準位のエネルギー間隔の関数として表現することが可能であり、「新たなAnti-Halo効果」として定義できることを示した。 また、これら不安定核の構造の変化は一粒子軌道における連続状態が重要な役割を担っていると考え、安定核からHalo核までを統一的に理解するために、16C(14C+2n), 20C(18C+2n), 22C(20C+2n)の3つの炭素同位体について三体計算を行った。炭素同位体における3体模型計算において、模型空間の制限が与える連続状態の寄与の変化について、Gaussian基底による十分広い模型空間と1粒子状態のエネルギーが制限された空間での結果を比較し、連続状態の寄与が与える波動関数の変化やエネルギーの収束性を議論した。 さらに、原子核の構造計算における相互作用パラメータ依存性やそれによって現れる構造の系統性を理解するため、数理データサイエンス的アプローチによって、相互作用のパラメータ空間と、それによって得られる三体模型の固有値との関連性を議論した。具体的には、非常に弱い束縛状態で起こるEfimov効果のようなユニバーサリティが成り立つ条件とパラメータ空間との相関を議論した。
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