研究実績の概要 |
今年度は, 強密度成層下の2種類のMHD熱対流シミュレーションモデルを定量的に比較することで、対流が担う乱流輸送について研究を行った。用意したのは①局所駆動型の熱対流モデル、と②冷却駆動型(非局所駆動型)の熱対流モデル、である。局所駆動型モデルでは, 計算領域全域をsuper-adiabaticに設定し, 負のエントロピー勾配で局所的に対流を駆動する。一方, 冷却駆動型モデルでは, 計算領域の大部分はadiabaticな状態に設定し, 計算領域の表面にのみ『光球における放射冷却』を模擬した冷却関数を組み込む。冷却によって熱エネルギー(エントロピー)を失った流体素片が、負の浮力によってadiabaticな下層域に落ちていくことで、コヒーレンスの高い対流が非局所的に駆動される。これら2つの熱対流モデルから『乱流energy fllux』を抽出し、定量的に比較した結果、以下の2点を明らかにした: ①局所駆動型熱対流による乱流energy fluxは、渦粘性を仮定した勾配拡散モデルで再現できる ②冷却駆動型熱対流による乱流energy fluxは、勾配拡散モデルからは大きく乖離している 冷却駆動型熱対流による乱流energy fluxには、対流層表面直下で大きなenhancementが見られ、これを説明するために、下降流プルームによる非平衡な熱輸送を考慮する必要があることがわかった。我々はコヒーレントな対流プルームによる非平衡な熱輸送まで考慮した乱流輸送の理論モデルを構築、そのモデルを使って、冷却駆動型熱対流による乱流エネルギー輸送を定量的に再現できることを示した。これらの成果は、Yokoi, N., Masada, Y. , Takiwaki, T. (2022), MNRAS, Vol. 516, 2, pp.2718-2735としてまとめられ、出版済みである。
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