研究課題
基盤研究(C)
大陸衝突型造山帯の深部で形成された高温高圧広域変成岩(グラニュライト)は部分融解していた可能性があるが、長年、決め手となる証拠が得られず、議論と混乱が続いていた。ところが近年、それを確証するものとして、ザクロ石などの結晶粒内にメルト包有物が見いだされた。それには冷却固結してガラス化したものと細粒で等粒状の鉱物集合体になったものがあり、後者は「ナノ花崗岩」と呼ばれた。そこで研究代表者はスリランカや南極などで採集したグラニュライトからメルト包有物の探査を開始した。その結果「ナノ花崗岩」に加えて、斑状組織を示し、樹枝状~球晶状の結晶を含むことなど火山岩に類似した特徴を示すものがあることを発見し、特に「珪長岩包有物」と呼んだ。火山岩が地下深部の岩石や鉱物を捕獲することがあることはよく知られた事実であるが、グラニュライト中のザクロ石結晶中に火山岩的な特徴を示す物質が含まれることは想定外であったため、学界ではなかなか受け入れられなかった。そこで本研究では、研究代表者は太古代から顕生代までの様々な時代の世界各地の大陸衝突型造山帯で採集した、泥質~石英長石質から苦鉄質までの多様な化学組成のグラニュライトを偏光顕微鏡、電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザー、ラマン分光分析機等を駆使して調べ、「珪長岩包有物」の産出が決してまれで例外的なことではないことと、非平衡結晶成長組織や準安定相の保存などその詳細な実像を明らかにしてきた。また、花崗岩質メルトの過冷却微細組織の再現・保存実験を実施し、「珪長岩包有物」を含むグラニュライトが地下深部から上昇し冷却する期間がこれまでの想定をはるかに超える短時間であった可能性を示した。このように、本研究では、グラニュライトが部分融解していたことを明らかにするとともに、大陸衝突型造山帯内での物質移動に関する革新的なモデルの構築が必要であることを明らかにしてきた。
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