研究課題/領域番号 |
18K04409
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2018-2021) |
研究代表者 |
相馬 明郎 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80601096)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 炭素貯留 / 炭素隔離 / 生態系モデル / ブルーカーボン / 炭酸平衡系 / 浮遊生態系 / 底生生態系 / 沿岸海域 / 浮遊系 / 底生系 / 炭酸平衡 / 堆積物 / 炭酸化学理論 / 気候変動 / 炭素貯留・隔離 |
研究実績の概要 |
浅海域生態系は,気候変動を緩和する機能を持つことが期待されているが,都市沿岸域における本機能の大きさやメカニズムは未解明である.こうした中,本研究では「大気-海洋間のCO2ガス交換(炭素吸収)」→「吸収した溶存無機炭素の生物生産による有機物・炭酸カルシウムへの固定(炭素固定)」→「固定化された炭素の堆積物への埋没(炭素貯留)」という,大気―海洋―堆積物に渡る,気候変動緩和の一連のプロセスを解析可能な数理生態系モデルを開発し,炭素吸収・固定・貯留の鍵となるメカニズムを推定し,評価することを目的としている.本研究では,昨年度まで,炭酸平衡系と浮遊系-底生系が時空間的に相互に連鎖したブルーカーボン生態系モデルを開発し,東京湾に適用した.また,開発したモデルを用い,炭素循環像の時空間変動の把握,炭素貯留の鍵となるメカニズムについて,解析・評価を実施した.今年度は,これらの解析に加え,(1)水温変化のみならず,pH変化に伴う海洋生物代謝の変化,ならびに(2)堆積有機物を取り巻く酸素濃度環境による,無機化形態の変化(好気的無機化・準好気的無機化・嫌気的無機化の変化)が,気候変動緩和機能に与える影響について,解析を実施した. その結果,(1)については,将来の海洋酸性化の進行が生物に与えるダメージと気候変動緩和機能の関係性,(2)については,閉鎖性海域における貧酸素化と気候変動緩和機能の関係性を,定量的・機構的に明らかにする基礎を構築した.(1), (2)の研究成果は,論文や学会にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)ブルーカーボン生態系モデルの開発・適用・検証は終えている.また,検証を終えたモデルを活用し,(2)炭素吸収,固定,貯留の3機能の時空間分布の解析,(3)3機能に対する物理,生物,化学過程の寄与の解析も,結果が得られている.これら進捗は当初計画通りである.これらに加え,一昨年度・昨年度は,当初計画に無かったブルーカーボン生態系モデルの計算スキームを高度化し,計算速度の向上,数値誤差の低減を図った.さらに,本研究にて構築した,生物・化学過程に伴う,全アルカリ度の変化と無機態溶存炭素の変化を同時に考慮した炭酸化学平衡のモデル化を,亜熱帯海域生態系のブルーカーボン評価にも活用した.さらに今年度は,海洋生物の酸性化の影響,有機物の無機化形態に伴う無機化速度の変化をモデルに組込み,その後,あらためてモデル検証を実施し,モデルの妥当性を確認した.こうした成果により,当初計画に無かった,酸性化や貧酸素化改善・悪化に対する生態系応答がより緻密に予測可能になりつつある.一方,コロナの影響により,当初予定していた国際会議での発表機会を複数回失った.これらの進捗状況に鑑み,(2)おおむね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,(1)水温変化のみならず,pH変化に伴う海洋生物の代謝過程の変化,ならびに,(2)堆積有機物を取り巻く酸素濃度環境に係わる,無機化形態(好気的無機化・準好気的無機化・嫌気的無機化)の変化を考慮できるよう改良した東京湾ブルーカーボン生態系モデルを活用し,都市沿岸域(東京湾)での炭素吸収,固定,貯留の3機能に関連する生物・化学フラックスの感度解析を多数実施し,特に,都市沿岸域の酸性化と貧酸素化が炭素吸収,固定,貯留に与える影響とそのメカニズムについて,定量的・機構的に明らかにする.
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