研究課題
基盤研究(C)
近年の建物施設の防耐火性能の向上、法医学の一酸化炭素中毒死判定技術の向上などにより、火災に伴う一酸化炭素中毒死の割合が増加してきている。そのため、一酸化炭素中毒により死に至った経緯を明らかにする必要性が高まっているが、火災鎮火後の現場調査時には、火災時に大量に発生した一酸化炭素は残存していない。そこで本研究では、火災シミュレーションを活用することにより、一酸化炭素濃度の分布状況を施設内において広域的に可視化し、検証可能とすることを目的とする。本研究では、まず、一定の発熱速度で燃焼する火源用のガス燃焼装置を構築・整備した。次いで、開口部を設けた箱形容器内に火源用ガス燃焼設置し、火源や開口部を変化させることにより換気条件を変えた実大規模の燃焼実験を行った。これら燃焼実験中に、ガス濃度計を用いて一酸化炭素濃度等のデータ収集を行い、一酸化炭素濃度の生成モデル構築に必要なパラメーターの要因抽出を行った。次に、箱形容器を用いて火源や換気条件を大幅に変化させた追加の実大規模実験を行い、一酸化炭素の生成が大きく変化する状況を把握すると共に、火災シミュレーションを用いてこれら一酸化炭素生成状況の再現性について検討を行った。この結果、換気支配型などの燃焼形態の違いが、一酸化炭素濃度の実測値に大きく影響していることが明らかになったため、火災シミュレーションにおいて燃焼形態の違いを考慮した既存モデルの応用手法にて、実測値に近い一酸化炭素濃度がシミュレーション再現される結果を得た。さらに、火災シミュレーションのプログラミングコードを改良し、コンパイル実行により、新たな火災シミュレーションを開発する環境を整えた。また、新たに二段階の反応となる一酸化炭素の生成モデルを提案し、新たなモデルを用いてシミュレーションを行った結果、実測値と比べ良好な再現性で一酸化炭素濃度が推計されるモデルが開発された。
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日本法科学技術学会誌
巻: 27 号: 2 ページ: 137-150
10.3408/jafst.827