研究成果の概要 |
BathiaとThorntonは, ゆらぎ構造を表す密度ゆらぎと濃度ゆらぎが, 回折理論と熱力学量から得られることを示し, 合金系から分子性液体までの様々なゆらぎ構造の解明に適応されている. 一方で, ゆらぎが顕在化する超臨界状態において, Bathia-Thornton理論を適用した場合, 異常な振る舞いを確認している. 以上より, 異常分散効果に基づく解析理論, および, 本課題で開発した散乱強度の絶対値化の手法により, 回折実験のみからゆらぎ構造を解析する取り組みを進めた. さらに, 超臨界水溶液での本研究を念頭としたコントラスト変調実験に用いる中性子散乱用試料ホルダーの構築を進めた.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ゆらきの概念は, 複雑系の構造特性に対して直接的な情報を与え, 理論の構築と実験手法の確立, 様々な系での解析に多くの努力がはらわれてきた. 先駆的には熱力学量の微分から求められ, また, 回折法では小角散乱法を応用した理論や実験から, 様々な溶液系などの混合状態が解明され, 現在でも精力的に研究が進められている. 単成分系で大きな構造ゆらぎが観測される超臨界状態において, さらに混合された溶質分子がいかなるゆらぎ構造を有するか, 基礎科学的な観点で重要な学術的意義を有し, 様々な現象との関わりの観点から社会的意義も有する研究と考えられる.
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