研究課題
基盤研究(C)
魚類は環境ストレスを受け成長などが影響される。本研究では絶食または抗生物質オキシテトラサイクリン (OTC) 投与をギンザケに施し、生化学的パラメーターに及ぼす影響を調べた。絶食とOTC投与により肝臓のHSP70の発現量は増加した。組織グルタチオンレベルは絶食で変化なく、一方OTC投与により肝臓で増加した。血漿成分は、絶食とOTC投与によりグルコースは増加し、脂質成分も若干変化した。以上より環境ストレスは体内で酸化ストレスを誘発するが、絶食が個体に及ぼす影響はあまり大きくないと推察される。また、ストレスの緩和や防止のためには、抗酸化物質の投与が有効であることも示唆された。
近年、天然水産資源の減少により、世界的に養殖魚に対する需要が高まっている。既に水産物由来のタンパク質源の約半分は養殖生産に依存しており、間もなく天然物との比率は逆転すると言われている。従って、養殖魚のストレスを軽減し健康を維持することは、生産性の向上と生産量の維持を可能とし、世界的な食料供給に大きく貢献すると考えられる。本研究で得られたストレスに関する研究結果は、魚類のストレス反応に関する基礎的な学術知見の提供だけでなく、前述の問題を解決するためにも重要と思われる。すなわち、今後の人類の食料供給と福祉に貢献しうる成果ととらえられ、今後のさらなる展開が期待される。
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