研究課題/領域番号 |
18K06131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮田 愛彦 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (70209914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | DYRK1A / DCAF7/WDR68 / FAM53C / タンパク質キナーゼ / リン酸化プロテオーム解析 / シグナル伝達 / タンパク質間相互作用 / WDR68 / WD40ドメイン / 分子シャペロン / キナーゼ / ダウン症候群 |
研究実績の概要 |
ヒトクロモソーム21番にコードされるDYRK1Aは脳・神経系の発生および機能に重要なキナーゼで、その過剰発現はダウン症候群の患者に見られるさまざまな症状の主要な原因である。また、DYRK1Aの機能不全が自閉症スペクトラム障害(ASD)、アルツハイマー型認知症(AD)、注意欠如多動性症候群(ADHD)、遺伝性精神遅滞の1つMRD7などのさまざまな精神・神経系の発達障害と関わることが近年知られるようになった。そのため、多くの研究者がDYRK1Aの構造・機能・制御機構の解明を進め、製薬会社が阻害剤の開発に力を入れるようになった。当研究実施者はDYRK1Aの結合タンパク質としてDCAF7/WDR68を同定した。DCAF7/WDR68はヒトから植物に至る広範な生物種でアミノ酸配列が高度に保存されたWD40リピートタンパク質である。更にこのDYRK1A-DCAF7/WDR68複合体に結合するタンパク質の網羅的リン酸化プロテオーム解析によりFAM53Cを同定した。また同時にFAM53Cの9つのリン酸化部位を決定した。FAM53Cはこれまで機能未知のタンパク質で、そのアミノ酸配列からは特定の酵素機能や構造は推定されていない。FAM53CとDCAF7/WDR68はDYRK1AのキナーゼドメインおよびN末端ドメインにそれぞれ独立に結合し、DYRK1Aを足場とする三者複合体が形成された。FAM53Cの結合によってDYRK1Aの自己リン酸化能および基質リン酸化活性が低下した。また、FAM53Cとの複合体形成により、DYRK1Aは単独で発現した場合に見られる細胞核への集積がなくなり、細胞質に局在するようになった。したがって、FAM53CはDYRK1Aを細胞質に不活性な状態でアンカーすることで、核内でのDYRK1Aの機能を阻害する制御因子として働くことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
近年その生理的機能に注目が集まるDYRK1Aとその関連ファミリーキナーゼ群(DYRK1A, DYRK1B, DYRK2, DYRK3, DYRK4)に関して、これまでに同定したHsp90, Cdc37, DCAF7/WDR68に加えて、新たにFAM53Cを同定した。FAM53Cがタンパク質相互作用によってDYRK1Aの活性と細胞内局在を制御するという、非常に重要な結果を得ることができた。また、DYRK1Aがシグナル伝達分子のハブとして機能するという新たな知見を得た。さらにDCAF7/WDR68との関連性や重要な基質であるMAPT/Tauリン酸化への影響など、DYRK1Aを中心とする細胞内のタンパク質インタラクションネットワークの解明に大きく寄与する結果が得られたと考えている。研究成果の一部を2022年11月にフランスで行われたDYRK1Aに関する国際会議で発表し、その後更に実験を進めて得られたデータを加えて論文を完成し、現在投稿中である。得られた成果は単に細胞生物学的・生化学的な意義に留まらず、広くヒト脳神経系の発達や精神機能の分子的基盤の解明に寄与すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ダウン症(DS)、アルツハイマー病(AD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)等との関わりから、DYRK1Aのヒト脳の精神機能における重要性が注目を集めている。しかし、DYRK1Aが細胞の中でどのように機能し、どのように制御されているかについては、未解明の点が多い。今後は、新たに見出したDYRK1A結合タンパク質FAM53Cの機能や構造に焦点をあてて研究を進める。具体的には、FAM53Cがどのようなタンパク質と相互作用し、DYRK1Aによる基質認識やそのリン酸化にどのような影響を与えるのかについて、主にタンパク質生化学および細胞生物学的な観点から実験研究を進める。既にFAM53Cを認識する特異抗体の作成に成功し、今後の解析の有用なツールとして活用したい。手法としてはこれまで同様に哺乳類培養細胞を用いた解析を行なう他、それぞれのタンパク質を精製して用いる再構成系の構築を行なう。また、既に行なったリン酸化プロテオーム解析の結果等からDYRK1A-DCAF7/WDR68複合体の新たな相互作用タンパク質候補が得られているため、今後はこれらの候補タンパク質との相互作用の有無やその生理的機能について解析を進める。得られた結果から、ヒトの脳神経系の発達や精神機能においてDYRK1Aを中心としてどのような分子群がどのような働きをしているのかについて、高次機能制御の分子的基盤解明に結びつく視点をもたらしたい。
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