研究課題
基盤研究(C)
神経突起先端に存在する成長円錐には様々なガイダンス分子受容体や細胞接着分子が発現しており、周囲の環境を探索しながら神経突起を適切な接続先へ伸長させる。成長円錐には多数のメッセンジャーRNA(mRNA)が局在し、細胞体とは独立したタンパク質翻訳機構により特異的な遺伝子発現を実現している。成長円錐での局所翻訳機構が神経突起伸長に関与することはよく知られているが、それがどのように制御されているのかについてはいまだ不明な点が多い。本研究では成長円錐における局所翻訳の制御にmRNAのアデノシンN6メチル化修飾(m6A修飾)が関与する可能性に着目した。m6A修飾はmRNAの特定のアデノシンに可逆的にメチル基を付加することでmRNAの翻訳効率や分解速度を制御する。本研究ではm6A修飾関連遺伝子の発現を分散培養下のニューロンにおいてRNAiノックダウン法を用いて撹乱し神経突起伸長への影響を検討した。さらに生体における神経回路形成へのm6A修飾関連遺伝子の役割を検討するため、子宮内電気穿孔法を用いて胎児期マウス大脳皮質でm6A修飾関連分子をノックダウンし神経回路形成への影響を調べた。これらの解析からいくつかのm6A修飾関連分子が神経回路形成に影響を及ぼす可能性を示唆する結果を得た。また並行してRNA顆粒や翻訳制御に関与する報告があるHSP90にも着目した。HSP90のisoform特異的な細胞局在を調べたところ、β isoformが神経突起の先端まで局在しており成長円錐において作用する可能性が考えられた。また、HSP90についてもRNAiノックダウンによりisoform特異的ノックダウンを行ない、分散培養およびマウス胎児大脳皮質における神経回路形成への影響を検討した。上記の結果については2022年度に第128回日本解剖学会・全国学術集会において発表した。
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