研究課題
基盤研究(C)
脊髄小脳失調症29型(SCA29)は、小脳の神経細胞の変性により運動失調症状を示す遺伝性の神経疾患である。SCA29の原因遺伝子として、IP3をリガンドとする細胞内Ca2+チャネルであるイノシトール1,4,5-三リン酸受容体1型(IP3R1)が同定されている。昨年度は、ゲノム編集でヒトの3種のIP3R遺伝子をすべて欠失したIP3R完全欠損細胞株を樹立し、この細胞株を用いてSCA29の点突然変異がIP3R1の機能に及ぼす影響を解明した。今年度は、IP3R完全欠損細胞株を用いて、小胞体とミトコンドリアの相互作用の分子機構に関する共同研究を行なった。小胞体-ミトコンドリア接触部位は、小胞体とミトコンドリアの膜が接触する特殊な構造であり、ミトコンドリアのエネルギー産生に必要な小胞体からのCa2+伝搬が行われる。小胞体-ミトコンドリア接触部位が形成・維持される分子機序は不明な点が多い。トーマスジェファソン大学との共同研究により、IP3R完全欠損細胞株は、小胞体とミトコンドリアの接触が減少していることが明らかになった。IP3R完全欠損細胞株に3種のIP3Rを遺伝子導入したところ、IP3Rは小胞体-ミトコンドリア接触部位の形成・維持を亢進することが明らかとなった。3種のIP3Rの中では特にIP3R2が最も小胞体からミトコンドリアへのCa2+伝搬に重要な役割を果たした。興味深いことに、この構造維持には、IP3RのCa2+放出活性は不要であった。これらの結果より、小胞体-ミトコンドリア接触部位の形成・維持を制御するIP3Rの新たな構造的機能が明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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https://www.riken.jp/press/2018/20181113_1/index.html