研究課題/領域番号 |
18K06621
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
萩原 健一 国立感染症研究所, 細胞化学部, 主任研究官 (40192265)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | プリオン / アミロイド / βヘリックス / 蛋白質凝集 / 光架橋反応 / βへリックス / ベータへリックス / コンフォメーション / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
異常型プリオン蛋白質(PrPSc)の未知の構造について、分子モデリングからβへリックスモデルが推定されている。このモデルを念頭に、PrPScの構造の理解へ繋げるウェット実験による研究を進めた。モデルでは、正常型プリオン蛋白質(PrPC)がPrPScへ変換すると、PrPCのアミノ酸残基およそ90番目から170番目(マウスのプリオン蛋白質のアミノ酸番号)がβへリックス構造へ転換すると考えられている。そこで、他の蛋白質に由来する既知のβへリックスのアミノ酸配列をこの領域に移植・置換した改変プリオン蛋白質(PrP改変体)を系統的に作製し、これらをプリオン持続感染細胞に発現させて、プロテアーゼK(PK)消化に対して抵抗性のPrPSc様の凝集体へ変換されるか否かを調べた。その結果、βへリックス配列の移植によってPK抵抗性を獲得するPrP改変体は昨年度までに見つからなかった。βへリックス配列の移植は期待した結果が得られなかった一方、マウスPrPのアミノ酸129-215番目をニワトリPrPのアミノ酸配列へ置換した改変体(計86アミノ酸中、66残基がマウスPrPと不一致)がPK抵抗性をもつことがわかった。本年度にさらに検討を進めたところ、PrPのC末端側の約35アミノ酸を欠失させたPrP改変体が、プリオン持続感染細胞に発現させるとPK抵抗性を顕著に示すことを新たに発見した。βへリックスモデルにおいてこの領域は元のPrPCの構造(αヘリックス)に保たれていると推測されているが、最近提唱された新規のモデルでは規則的に集積したβシート構造になると推測されている。興味深いことに、上記の領域にPrPとは無縁のアミノ酸配列を挿入しても、顕著なPK抵抗性が維持された。この中には、プリオン非感染細胞に発現させてもPK抵抗性を自発的に獲得するものがあることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
得られる結果が当初の予測に沿うものではなかった反面、予想していなかった興味深い結果が得られた。このため、予想外の結果を追跡するために新たな実験を追加し、当初の研究スケジュールからの遅れが生じた。また、COVID-19関連の優先業務のために本研究への時間が十分にとれなかった。総じて、限られた時間内で、新たな発見を含めて研究を進めることができたと思う。
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今後の研究の推進方策 |
「PrP以外の蛋白質で同定されているβへリックス構造のアミノ酸配列をマウスPrPへ移植することでPrPCの凝集を亢進できるだろうか」という疑問に答えるために、一連のPrP改変体を作製して調べたが、凝集能が高まったPrP改変体は発見できなかった。これまでの実験結果から、PrPCからPrPScへの変換過程は、当初に研究代表者がβへリックスモデルから予想したような単純な様式ではないということを認識しつつある。一方、本年度には、マウスPrPのC末端側を欠失させたPrP改変体が、予想外にPK抵抗性を示すことを新たに発見した。また、これらの欠失型改変体の中に自発的に凝集体形成を起こすものを見つけた。この発見は昨年度までにPrPScの光架橋実験で得た結果と考え合わせると興味深い。PrPと異なり、新たに見出したPrP改変体はN型糖鎖を欠くためにPrPよりも取り扱い易く、解析対象として有利である。今後、このPrP改変体を利用した実験を進め、これまでに得た知見を深めたい。
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