研究課題
基盤研究(C)
遺伝学的なスクリーニングにより,スフィンゴミエリン (SM) のflipに関わる候補遺伝子として,PMP2を同定した。PMP2遺伝子のノックアウト細胞では,蛍光ラベルしたNBD-SMのflipがcontrolに比べて起こりにくくなっていた。PMP2を過剰に発現させた細胞では,SMはcontrolに比べて細胞膜外層で減少し,内層で増加していた。NBD-SMを添加した人工膜に,リコンビナントのPMP2タンパク質を反応させたところ,NBD-SMが人工膜の片方の層からもう一方の層へflipされていた。以上の結果から,PMP2はSMを細胞膜外層から内層へflipさせる活性を持つことが示唆された。
グリセロ脂質に関しては,P4-ATPaseファミリーに属するflippaseによって,細胞膜における非対称性が生み出される。グリセロ脂質の非対称性は,アポトーシス,細胞膜の曲率変化,小胞輸送,細胞膜極性にとって重要な働きを担っていること報告されている。一方,SMを含めスフィンゴ脂質に関しては,非対称性を生み出す分子機構,およびその生理的意義はほとんどわかっていなかった。今回見出したPMP2によるSMのflipは,スフィンゴ脂質のflipの初めての例である。今後,SMの非対称性を変えた変異細胞を用いて,ウイルス感染や末梢神経疾患に対する薬剤の開発など,応用が期待される。
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