研究課題
基盤研究(C)
血管新生では、内皮細胞同士が追い越しやすれ違いにより、互いに位置関係を変えながら血管を伸長する様子が明らかとなっている。本研究では、これを制御するメカニズムを明らかにする目的で、マウス膵ラ氏島微小血管由来内皮細胞株MS-1細胞を用いた細胞動態の解析を行った。その結果、血管新生を可能にする内皮細胞固有の細胞動態として、細胞接触により亢進する、①VE-カドヘリン依存性の協調的直線運動と②VE-カドヘリン非依存性の回転運動を見出した。さらに、回転運動の分子機構として、CD31による細胞接着とアクチンフィラメントによるラフリング現象、Focal Adhesion Kinaseの活性化の関与が示された。
本研究における内皮細胞固有の協調動態としての回転運動の発見は、血管新生を可能にする細胞運動の素過程として、これまでの研究でも報告のない全く新しい知見である。その妥当性は、数理モデルに基づくシミュレーションにおいても、回転運動が血管に特徴的な枝状構造を効率よく再現したことでも示されている。本研究の成果を足掛かりとし、内皮細胞固有の細胞動態を生み出す責任分子の同定、さらには遺伝子の再構成実験により非血管細胞から血管構造あるいはその一部でも作ることが出来れば、血管誘導による臓器機能の再建や細胞移植による再生医療に新しい可能性を拓くことが期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Nature Metabolism
巻: 3 号: 2 ページ: 196-210
10.1038/s42255-021-00342-6
津田塾大学 数学・計算機科学研究所報
巻: 42 ページ: 141-147
http://bio.m.u-tokyo.ac.jp/index.html