研究課題
基盤研究(C)
特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の原因探求の一環として、AIGA患者の有汗部と無汗部の皮膚汗腺を形態学的に比較した結果、無汗部汗腺明細胞が浮腫性に障害され、その障害の程度がAIGAの血清マーカーとされるCEAと相関していた。電顕的に観察すると明細胞の浮腫性崩壊は、CEAが最も高発現を示す細胞間細管という隣接する明細胞の破壊に基づくものと理解された。免疫染色で、明細胞特異的分子carbonic anhydrase II(CA II)の発現が著減しており、明細胞の萎縮や消失に相当するものと考えられた。明細胞に発現している分子であるCA II, M3などの自己抗体の有無を検索したが陰性であった。
熱中症が数多く報告されている昨今、AIGA患者はその危険群に入り、症状が軽度のものを含めるとAIGA患者とAIGA予備軍は相当数に上るものと推定される。AIGAの原因は確定できないまでも、初期に汗腺形態の変化は有意ではないものが多いとされて来ていたが、今回の研究により汗腺の器質的な障害が生じていることが明白となった。その成因は自己抗体は否定的であり、非自己抗体性の炎症性のものであろうことが推定される。今後、熱中症予防の観点で、さらに知見を積み重ねて発症メカニズムの解明につながるものと期待される。
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