研究課題
基盤研究(C)
宮崎大学医学部感染症学講座寄生虫学分野に寄生虫症検査依頼のあった3,085症例の臨床情報と検査結果を分析した。検査依頼症例の症状・症候で最も多かったのが胸部症状または胸部異常画像所見で、全体の約3分の1を占めた。腹部症状、神経症状、眼病変がこれに続いた。末梢血好酸球増多または局所の好酸球浸潤をともなう症例は全体の54.5%であった。検査の結果最も寄生虫症の割合の高かった症候は皮膚爬行疹(70.2%)で、次いで皮下腫瘤(65.4%)、肝異常陰影(43.8%)が続いた。好酸球増多をともなう場合は陽性率はそれぞれ10%程度高くなった。
線虫や条虫、吸虫による寄生虫症は疾患としては単純であり、正しく診断がつけばほとんどの場合に治療は容易である。ところがごく稀にしか遭遇しないため、一般臨床医にとっては典型的な苦手感染症になっている。本研究は、現在の日本の日常診療の中で、どのような訴えや所見がある場合にどのような寄生虫症の確率が高いのかを明らかにした。また同時に、虫体由来抗原または組換え寄生虫抗原を用いた信頼性の高い系を確立した。これらを組み合わせることにより、誰がどの医療機関を受診しても、正しく寄生虫症の診断に到達するような診断プロトコルの策定が可能となった。
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