研究課題
基盤研究(C)
分子標的薬の獲得耐性機構として上皮間葉転換(EMT) が注目されており、耐性機構の一因であることが示唆されるが、その克服治療法は確立されていない。オシメルチニブ耐性肺癌細胞を用いた実験では、miR-200cの減少とZEB1の増加によるEMTの誘導が示唆された。100 種類のキナーゼ阻害剤ライブラリを用いた薬物スクリーニングの結果、グリコーゲン合成酵素キナーゼ 3 (GSK-3) 阻害剤が間葉表現型を持つ耐性細胞の増殖を著しく阻害し、アポトーシスを誘導することが示された。これらの結果は、GSK-3阻害がEGFR変異肺癌におけるEMTに起因するオシメルチニブ耐性の克服に有用であることを示唆した。
肺がんに対して分子標的薬が有効であるが、多くの場合、薬剤耐性化することが問題になっている。その原因として、EMT(上皮間葉転換)が知られ、肺癌だけでなく、乳癌、膵癌、卵巣癌など多くの癌において報告されている。しかしながら、これまでに臨床においEMTによる耐性を克服できる薬剤は見つかっていない。本研究において、EMTによる薬剤耐性化したがんを殺すための薬剤を探索した結果、GSK-3阻害薬が有効であることを見出した。今後、動物実験や臨床試験を行い、これまで治療法のなかったEMTに起因する耐性克服治療が可能となれば、肺癌だけでなく多癌種に広く応用できる可能性があり、臨床的意義は高いと考えられる。
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