研究課題
基盤研究(C)
近年、食生活の欧米化や運動不足による小児の肥満の割合は急速に増加している。また、小児肥満の5~10%には高血圧、高脂血症、糖尿病などの肥満に伴う合併症があるとの調査結果があり、小児期の生活習慣病の増加が懸念される。リン脂質の一種であるリゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)は様々な生活習慣病のバイオマーカーとして知られているが、その生理活性や小児の生体内での役割はいまだ不明である。小児期の詳細な脂質プロファイリングやバイオマーカーの探索は生活習慣病の予防や治療においてきわめて重要である。2023年度はLPEと小児の生活習慣病の関連を明らかにするため、LPE濃度をより迅速かつ高感度に測定するために液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)の改良を行った。また、確立した質量分析定量法を9歳から12歳の小児342名の血漿中LPE濃度の測定に成功した。調査対象の学童342名のうち、肥満度により分類された痩身傾向児、標準体型児、肥満傾向児の人数はそれぞれ12名、292名、38名であった。標準体型児の血漿総LPE濃度は男子で11.96 ± 0.28 pmol/μL、女子で10.94 ± 0.29 pmol/μLであり、男子の方が有意に高値を示した(p = 0.0120)。血漿中LPE 16:0濃度は、肥満傾向児で1.12 ± 0.28 pmol/μL、標準体型児では1.32 ± 0.41 pmol/μLであり、標準体型児と比べて肥満傾向児で有意に低い値を示した(p = 0.0453)。小児期の血中LPE濃度が成人期の生活習慣病と関連する可能性について、今後、さらに検討する予定である。
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