研究課題
基盤研究(C)
先天性好中球減少症(SCN)は種々の遺伝子異常で発症する多様な疾患群であり,責任遺伝子と病態との関係の詳細が明らかでない。最も頻度の高い好中球エラスターゼ遺伝子変異SCNの病態解明を,患者由来のiPS細胞の樹立後,骨髄顆粒球系細胞への分化誘導を行い,前骨髄球での早期アポトーシス細胞の増加を明らかとした。患者骨髄での成熟障害に一致する所見であった。遺伝子編集から,好中球エラスターゼをノックアウトすることで,正常人由来iPSと同様に,好中球への分化が認められたことから,変異エラスターゼが骨髄顆粒球系細胞の増殖分化を阻害することが,本症の病因として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
先天性好中球減少症は病因,治療法が確立されていない遺伝性希少疾患である。現段階における唯一の根治療法は造血幹細胞移植であるが,疾患の病因を解明することで,新規治療法の開発が可能となる。本研究は,患者さんの骨髄細胞から樹立した疾患特異的iPS細胞を樹立し,遺伝子編集技術を応用してその病因解析と治療法開発を目的とした。患者さんからの骨髄細胞を用いた研究には限界があり,疾患特異的iPS細胞の樹立と利用は研究範囲の拡大に繋がる。また,遺伝子編集技術は根治療法の開発の可能性ももたらすことから,本研究の手法は多くの遺伝性疾患の病因解析,治療開発に有用な研究手段であることが示唆された。
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